ビッグ・ブラザーな「王様の執行官」
スウェーデンで、滞納や不払い債権の最終的な徴収の執行と国民の信用情報管理を一手に引き受けるのは、国の官庁であるクロノフォグデン(Kronofogden・国家執行機関)。
日本では、未回収の債権問題は最終的に裁判所に持ち込まれるだろうし、個人の信用情報は銀行やカード会社などが加盟する民間の信用情報機関で扱われるのが一般的だと思う。
個人の情報はすべてマイナンバーで管理されているスウェーデンでは、それがクロノフォグデンになる。「王様の執行官・管財人」という中世から続くどこか牧歌的な名前とは異なり、この機関の存在はちょっとビッグ・ブラザー的でこれだけ取り上げても少し恐ろしいものもあるが、今回の問題はまったく別のところにある。
地方行政が滞納督促をアウトソースしたら
日常生活を支えるサービスの多くは、私企業ではなく、市や県といった地方自治体が支えているのが基本のこの国では、図書館の延滞金から医療費の支払い、ホームヘルパーの代金に至るまで、自治体が住民に送る請求書のハンドリング並びに延滞金の取り立てもひと仕事だ。
全国地方自治体連合会のお墨付きをもらって、この滞納金回収事業をプロが効率的に行うことを謳い、昨年から参入したのがグローバルでビジネス展開をするIntrumという債権回収業者。
水曜日夜8時の真面目な報道スクープ番組
SVT・スウェーデン公共放送の人気番組『ウップドラッグ・グランスニング(Uppdrag Granskning・ミッション!精査します)』が、昨日の番組で明かしたのは、200クローナ(約2400円)以下の微小な債権が、自治体からクロノフォグデンに持ち込まれているケースの急増だ。
番組が明かした背景は、各自治体とIntrumが交わした契約内容にある。(各自治体が交わした契約はもちろん市民やジャーナリストは請求して、みることができる)。
契約では、Intrumは自治体に変わって自らから債権者に送った督促状が期日までに支払わないことが分かりればすぐに、それがたとえ少額のものであっても、その案件の最終回収をクロノフォグデンに依頼することで、手数料をがっぽり稼げる仕組みとなっていた。
番組のジャーナリストに実態を指摘された自治体の中では、昨日の番組公開までにすでにIntrumとの契約を破棄したり、契約内容を変更したところもあることが合わせて報道されていた。
行政仕事の無駄はもちろん省かれなければいけないだろうが、効率化というマジックワードに騙されてもいけない。
この自治体が一番多くの少額債権をクロノフォグデン送りにした。「意図したことではまったくない」 (SVT Nyheter)