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誰にも祝ってもらえないエレスンド大橋20周年

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本日、2020年7月1日、デンマークとスウェーデンの間に架かるエレスンド大橋が20周年を迎える。でもこのコロナ禍で、大したお祝いのセレモニーもない。

この2カ国間の開かれた国境、手軽で自由な行き来を象徴してきたエレスンド大橋は、2015年の欧州難民危機の影響で閉じられた国境の陰に霞んでしまい、コロナ禍でさらにその役目は限定的なものになり、スウェーデンとデンマークの間も、なんだかモヤモヤしている。(こんなこともあったし「スウェーデン人お断り」のアホらしさ  swelog

15.9kmの長さを誇るエレスンド大橋はヨーロッパの中でも一番大きな建造物のひとつ。北や西ではフィンランドやノルウェーに地続きで繋がっていたスウェーデンが、南の端でもデンマークと地続き感覚で繋がった意味は大きい……はずだったが、今は? 

このコロナの規制下での特別な状況が落ち着いてくればまた、、とは思う一方で、移民危機でカストロップ空港に金網が張り巡らされたあの状況以前の、存在自体も意識することのない開かれた国境の伸び伸びとしたあの明るい開放感は、もう二度とは戻ってこないのではないかと思ってしまう。

未来の国境 - swelog 今日のスウェーデンのニュース

今、コロナ禍で大橋を渡る車は60%、電車の運行は80〜90%も減ってしまっているが、外国との輸出入で経済がなりたっているスウェーデンに、この橋を通過してやってくる食料や物資は、これからも劇的に減ることはないだろう。

私も移動が普通にできるようになれば、またコペンハーゲンに遊びに行きたいな、とは思うけど、前のような気軽さはなくなってしまうような気がする。

人の行き来に関して付け加えると、橋ができてからスウェーデンとデンマークの間を行き来して通勤していた人は2008年に26,000人とそのピークを迎えたが、その後はリーマンショックなどで経済が冷え込み、2015年に調査された時は18585名まで減っていた。(そしてその9割はスウェーデンからデンマークへの働きにいく形だった)

さらには電車で30分で行くことのできる利便性をありがたく思っていたコペンハーゲンのカストロップ空港は、気候危機や今回の新型コロナのような感染症などのリスク(さらには、テロのリスクというのもあるかもしれない)から、なるべくなら行かないほうがいい場所、というカテゴリーに私の中で入っていきつつある。

橋が完成してから最初の15年間に私たちが感じていたあの開放感は、あの時だけの特別なものだったと、未来から振り返った時に、そう評価されるような時間になってしまうのだろうか?

それとも、2015年からコロナ禍が落ち着くまでの、狭くなっている今の国境の感じが、今だけの特殊なものであったとなる可能性もなくはない。でも私には、もうあの明るい国境時代に、この先すっと戻るとは思えない。とても残念だけど。

国境が閉じられたまま20周年を迎えるエレスンド大橋

© Hiromi Blomberg 2023