ほんの一週間ほど前までスウェーデンでは、公共放送のSVTがオリンピックの中継をしないだけではなく、ニュースで動画クリップを使うことができるかどうかも決まっていなかった。SVTは既に2014年からオリンピックの放映権は獲得していない。
スウェーデンで今年のオリンピックの放映権はディスカバリーチャンネルが持っており、昨日の開会式は同社の所有するKanal5が放映した。この先も、スウェーデン人が出場するなど人気の種目は地上波デジタル局であるこのKanal5か、同じくディスカバリーチャンネル所有のKanal9が放送することになる。そして有料チャンネルのディスカバリー・プラスでは開催期間中多くの競技をくまなく東京から中継する予定だ。
SVTは2014年と2016年のオリンピックに続き、今回の東京オリンピックにもアクレディテーションと呼ばれる報道機関としての登録を行っていない(2018年は実施)。今回アクレディテーションを行わず報道機関パスを得なかったという点では、スウェーデン民放最大手のTV4も同じだ。
アクレディテーション(報道機関パス)があれば、大会会場でもインタビューが可能になるが、これまでもSVTはパスがなくても独自インタビューは会場の外で行うことでオリンピック報道を続けてきた。今回の東京オリンピックが目指していたバブル方式では、そのような会場外での取材を軸に報道を行うことは難しいと判断され、65年ぶりにオリンピック現地取材の記者派遣も行わないことになった。
SVTがオリンピックの映像使用権についてディスカバリー側と合意したのは、開会式が間近に迫った先週の金曜日。それまではSVTが各競技のハイライト映像を同局のストリーミングサイトSVT Playやニュース番組などで放映できるかどうかも不明だった。
さらには、IOCはオリンピックはできるだけ誰もがアクセスできる地上波での放映を望んでいるようだが、この先はNetflixやアマゾンのような企業が独占的に放送するという可能性もありそうだ。オリンピックは国民が一体感を分かち合うものではなく、一部のスポーツファンだけが観るものになっていくのだろうか?
夏休みに入って(さらにはその初っ端に捻挫して動けず😅 )時間のできた私は、昨日の開会式はKanal5で映像とスウェーデン語のコメントを聞きつつ、もう一方の耳ではポリタスTVで津田さん、辻田さん、佐久間さんのコメンタリー放送を聞いていた。なんだかなぁ~、と思いつつ三人の話に耳を傾けながら溜まっていた作業をパソコンで処理していたが、終盤の聖火で長島・王・松井の野球トリオが出てきたときには驚いたし、最後の大坂なおみで感動し、いろいろ考えた。
その感動の直後に、Kanal5は千駄ヶ谷の駅で五輪反対デモを行う人々を中継し、再び複雑な気持ちになって開会式特番は終わった。さて、私はオリンピック中継をこの先も観るのかな?
SVTとディスカバリーがオリンピックにに関して合意(Dagens Media)