スウェーデンではすっかりおなじみの顔になった公衆衛生庁のヨハン・カールソン長官とアンデシュ・テグネルが、いつもとは違う明るい光の屋外でとった写真を見かけて、あれっと思ったら、彼らはソマリアにいたのであった。
スウェーデンの公衆衛生庁は、2019年9月にソマリアに国立衛生研究所を立ち上げるための協力体制を約束したが、その後すぐにパンデミックがやってきたため具体的なことはこれまでできていなかった。今回渡航制限が解除されたので、彼らの初の海外出張先として選ばれたのが、世界で最も危険な場所の一つとされるソマリアの首都モガディシュ。四半世紀に渡るこれまで戦争やテロで危険な状態が続き、街は荒廃している。
ソマリアでは今も政治的に不安定な状況が続いており、今回の協力も公衆衛生の活動を政治や現在の権力者から切り離し、政治からは独立した公衆衛生技術に特化した機関を確立することを目指している。
その活動を支える人材も不足しているが、今スウェーデンに住むソマリアからの難民は7万人いて、スウェーデンに住むアフリカからの難民の中でも一番大きなグループとなっている。この中には高学歴の人も多く、彼らからの協力も得ているとカールソン長官はダーゲンス・ニュヘテルのインタビューに答えている。
同時にストックホルムでコロナの第一波が広がったとき、死者の中でソマリア人の割合がとても高かったことを思い出す。ソマリアの人口はスウェーデンと比べて、圧倒的に若いが、今もソマリアでは死者も多く、医療機関は逼迫している。
また、ワクチン接種に至ってはソマリアでは全人口のわずか2%に行き渡っているだけといった状況で、「(コロナ禍には)世界レベルで一緒に取り組む必要があり、(富裕国で)必要のない3回目の接種に多くを費やすことがあってはいけない。パンデミックを食い止めるには世界にワクチンが行きわたらなくてはならない」というのが長官のソマリアからのメッセージだ。
ただし、ワクチンが供給されるだけで問題は解決せず、ソマリアの人の間にはワクチンに懐疑的な人が多い。ワクチンがパンデミックを食い止めるためにはとても重要なものであることを理解してもらう必要がある。
ヨーロッパではまたコロナの感染者が増えてきて来ているという報道が続いているし、今のところは落ち着いているスウェーデンでも、また去年のようにクリスマスに向けて感染者は増えていくのかもしれない。ただしワクチンの効果か、感染者は増えても重症化する人はぐんと減っている。
アフリカのワクチン接種状況とそれが世界に与える影響については、こちらのBBCジャパンの記事でもどうぞ。