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人種生物学標本写真

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このブログを読んでくれている方の中には、映画『サーミの血』を観られた人も多いのではないだろうか? 

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この映画の中でも、20世紀初頭に世界でも最も人種生物学研究に力を入れていたスウェーデンで、サーミの人たちが劣った人種として研究の対象となり、人種を研究するためと称して、裸の写真を撮影されたり、頭蓋骨の大きさを図られたりする場面がでてくる。頭蓋骨の大きさは当時、人種研究の鍵を握ると考えられていた。

この研究のために人種学研究所が1920年にウプサラに設立され、1950年代に研究所は解体されたが、研究当時に集められた人種の標本写真12000枚は、今もウプサラ大学に保存されており、閲覧の希望があれば誰でも見ることのできる状態にある。

写真コレクションの約3分の1がサーミの人たちを撮影したもので、その他にはトルネダーレンやロマの人など、スウェーデンの他の少数民族の人たちを撮影したものであると考えられている。

最近のニュースで取り上げられていたのは、このウプサラに保管されている写真の所有権をサーミ議会(サーミ人の政府機関)に移すことを、複数のサーミの団体が要求していること。

ウプサラ大学のコレクションの現在の責任者が説明していたが、今の法律の枠組みでは、大学には保管する義務があり、また公開する義務もある。文化担当大臣は大きな研究対象の一部だけを切り取って所有権を移すことは簡単ではない、と取材に答えていた。

ニュースのクリップでは、勇気を振り絞ってこの写真標本を見に行った若いサーミ人女性へのインタビューも紹介されていた。写真を取られた人たちには名前もなく(番号などで分類されている)、たった100年前に自分の身近な人たちに何が起こったのを辛いほど理解することができた、と声をつまらせて話していた。彼女もこの写真たちがウプサラから開放されて、故郷に地に戻ってくることを望んでいる。

スウェーデンだけでなく、様々な国際映画受賞している『サーミの血』、またご覧になっていない方はぜひ観てください。

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サーミ議会コメント「裸のサーミ人の写真が公開されていてはいけない」(SVT)

大学は写真の保管を移譲する予定はない(SVT)

文化担当大臣「さらされてしまっているサーミ人の写真の公開をやめるのは簡単ではない」(SVT)

『サーミの血』のスターがコメント「考えただけで悪寒が走る」(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023