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NATO加盟と民主主義「43%の人は賛成していない」。そして「次は核武装」議論も始まる

「民主主義的な正当性を欠いたまま話が進んでいってしまった感があります」と昨日の夜のNATO加盟問題に関するSVTの特別番組で発言していたのは、大手新聞ダーゲンス・ニュヘテルの文化局長ビョーン・ヴィーマン。

ヴィーマンは「今回のNATO加盟に関する一連のプロセスは危険なものを含んでいる」と当日のコラムに書き、その夜にテレビで、NATO加盟に賛成するスッドスベンスカン紙の政治部長と「スウェーデンの平和」代表と共に議論を戦わせていたが、上記はその時の発言だ。

ヴィーマンはスウェーデンのメディアの中に登場する人たちや政治家の中では、あっという間にNATO加盟への耳を疑うようなコンセンサスが築かれてしまったが、一般人の間では、そのような熱狂ともいえる雰囲気とは少し距離のあることを指摘する。

昨日発表された最新の世論調査では記録的な57%の人がNATO加盟に賛成と答えたが、43%は反対や態度保留など、賛成側に回っていないことにも言及する。このことが長期的には、民主的手続きを重視してきたスウェーデンの民主主義そのものへの信頼を損ないかねないというのがヴィーマンの指摘だ。

短期間に急激に変化した今回の政治的決断に、次はスウェーデンへの核兵器の配備が決定されるだろうと声を上げる人もでてきた。環境党は「平時においても戦時においてもスウェーデン国内への核兵器の持ち込みを禁止する法律を即刻制定するべきだ」と主張する。

アンデション首相は、スウェーデンは他のNATO加盟国であるノルウェーとデンマークと同じく、領域内に核兵器の持ち込みもさせないし、NATOの恒久基地もいらないことをはっきりと宣言すると話しているが、環境党はそれだけでは十分でないと指摘する。

デンマークとノルウェーの場合はNATO加盟国内でその主張を尊重するというだけのものだし、一方フィンランドには核兵器を持ち込まないことを掲げた法律がずいぶん前から存在する。スウェーデンもその考え方を法律として明文化するべきだというのが環境党の主張だ。

しかし、あれだけ軍事面での中立性を大事にしてきたスウェーデンが「具体的な危機がすぐそこにある」という議論で、200年以上保ってきた立場をこれだけ早く変化させたのを間近に見ていると、自体がもっと深刻化すると「核配備も避けられない」という政治的決断というのも、きっと起こり得るのだろうなと想像する。環境党のいう法律が仮に制定されても、それを覆すことすら案外簡単に起こってしまうのかもしれない。

日本人の多くは自国を「戦争を放棄した国」として世界の中でも特別な存在だと考えていると思うが、スウェーデンも中立国として自国の唯一無二の世界における存在感をとても大切にしてきた国だと思う。

その国にして「この一線は決して超えない」という確固なものなどなかった。スウェーデンで起こったことは、残念ながら、きっとこの先日本でも起こるのだろうと、ため息をつく朝。

ビョルン・ヴィーマン「民主主義の正当性を欠いているような感覚」(SVT)

環境党は核兵器禁止法の制定を要求(SVT)

「NATOの核武装計画への共同責任はスウェーデンのリスクを高める」(SVT)

© Hiromi Blomberg 2022