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ルーベン・オストルンドと2度めのカンヌ・パルムドール

カンヌ国際映画祭で2度めのパルムドールを受賞したけれど、映画評論家からその価値に値しないなどの声が上がっているルーベン・オストルンドは、その批判をどう受け止めているのか、いくつかのスウェーデンのメディアが取材していた。

現在生後8ヶ月の息子の育児を担当しているオストルンドは、授賞式から戻ったその夜から子どものオムツを取り替える生活を送っており、カンヌのヒステリーから日常生活に戻るにはとてもよいと話す。

各国の名のしれた映画評論家からの批判よりも、彼にとってはカンヌでの一般上映会で嵐のような拍手喝采を受けたことが重要で、これは映画をみた後ですぐに誰かと話したくなるような作品を作りたいと考えている自身の方向性と一致する。

パルムドールも一度だけなら審査員たちは間違ったのか? と考えることはあっても、二度目となると一度目も間違っていなかったことの証明となり、自身の監督としてのブランドを確認することができたという。

オストルンドは、次世代のスェーデンの映画製作者にとって、自分がスキー競技のイングマール・ステンマルクやテニスのビョルン・ボルグのような存在になることができればいいと話す。映画という分野がいきいきとして、とてもおもしろいのだと多くの人が興味を持ち、社会を動かしていくような議論が湧き上がるものになればいいと願っているという。

そういう意味では、私にとってもオストルンドの映画はまさに「好きじゃないけど、後々までなにかを考えさせる映画」という点で、彼の目指しているものが体現されているようだ。

『フレンチアルプスで起きたこと』も『ザ・スクエア 思いやりの聖域』も素直に「よかったよ!」と誰かにすすめる映画ではなかったけど、今も折に触れて思い出し、あれはなんだったのだろうとちょっと考えてみたりする。

まだスウェーデンでも公開されていない『哀しみのトライアングル(Triangle of Sadness)』もすごく観たい気はまったくしないけれど、きっと観にいって、いったらいったで何か考えたり、誰かに話したくなったりするんだろうな。オストルンドの思うツボではないか。

ルーベン・オストルンド「ケツに棒を突き立てたような評論家たちがいる」

© Hiromi Blomberg 2023