EU主導で未来の枠組みを創っていく感じには、これまで感心することが多かったのだけれども、この水曜日の「原子力発電と天然ガスをグリーンエネルギーとして分類します」認定には「ちょっと待ってよ!」感が強すぎる。
EUは温暖化ガスの排出量を2050年までに「実質ゼロ」とすることを目標としている。欧州委員会が策定した規則案は、気候変動の抑制に寄与する投資対象「EUタクソノミー」に23年から天然ガス発電や原子力発電を加え、それらへの投資をグリーンと認定する内容。
規則案にはさまざまな曲折があり、ガスと原子力のグリーン認定を巡っては加盟国や議員、投資家の間で意見が割れた。原発に依存するフランスと石炭の使用量が多いポーランドが規則案を支持する一方で、オーストリアとルクセンブルクは法制化されればEUを提訴する構えを見せている。デンマークなどは、二酸化炭素(CO2)を排出するガスを「グリーン」と見なせば、EUの気候変動対策への信頼を損ねると警告している。
環境保護団体のグリーンピースも法的措置を取ると表明している。欧州議会、天然ガス・原子力の「グリーンな投資」認定を支持 | ロイター より
こんな大切な決定がなされた時に、スウェーデンから欧州議会に選出されている各党議員はなにをやっておったんじゃ、ということで各ニュースメディアが取材をしていた。
反対派の社会民主党のグーテランド欧州議会議員は「化石燃料である天然ガスを抑制する機会を逸し、気候目標の達成は難しくなり、またプーチンのロシアへの依存度が高まる危険性」に言及。中央党のヴェスネル議員は「原子力に目がくらんで、天然ガスに目につぶるという、スウェーデン各党の歴史的な裏切り」だとコメントしている。
スウェーデンを含んだ3ヶ国は今回の決定から天然ガスをグリーンエネルギー認定から排除しようと試みてきたがそれに失敗したと書かれている。今回の決定を受けてEUを提訴すると声をあげていたオーストリアとルクセンブルグは、原子力発電に強く反対しているが、スウェーデンはそうではない。
今回の決定に賛成側の自由党のカールスボー議員は、「これは欧州の今後のエネルギー政策にとってとても重要な一歩で、将来的に天然ガスに依存しない状態を作りたいのなら、原子力発電をもっと推し進めなくてはならない。原子力発電がなければ化石燃料からの脱却の可能性はない。原子力発電なしに気候目標を達成できると考えるは甘い」と回答している。穏健党、キリスト教民主党、スウェーデン民主党も自由党と同様の意見だ。
今回の決定は、タクソノミーすなわち、EUの気候目標やパリ協定を達成するために必要となる投資を環境や気候問題に配慮したものであるとお墨付き認定し、年金基金など大口の投資家に何に巨額の資金を投入してもらうか、その投資先に関する舵取りの役割を果たすものだ。タクソノミー(Taxonomy)という言葉自体はただ「分類学、分類法」という意味を持つのみで、はい、みなさんご存知の分類学の巨人リネー(リンネ)の偉業に端を発している。
しかし、このまま行くとスウェーデンも次の選挙で右派陣営が政権をとったら原子力発電に邁進しそう。嫌なんだけど!