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Tiktokと政治、そして選べないグレタ

日曜日の投票日を目前に、昨夜はSVTで最後の党首討論会が行われたが、テレビを見ない若者の間ではTiktokでの政治家インタビューなどが大きなトレンドになっている。

毎日12時間、Tiktokのビデオ編集に費やし、一日に最大6本のTiktokクリップを公開しているのはヨン・へーディン(John Hedin https://www.tiktok.com/@gingerjompa)。彼の党首インタビューや各党の選挙小屋(街の広場に選挙期間中建っている、各党の広報用の小屋)でのインタビュー動画クリップは、1500万〜2000万回再生されている。へーディンの実感では若者たちがこれほどまでに政治に関心を持ったことはない。

へーディンはどの党にも加担しない中立的な立場で、広告などでお金を儲けることもなく、ジャーナリストのようにと心がけながらコンテンツを作ってきた。彼のクリップの人気がでるにつれ、悪意のあるコメントや脅迫をうけたり、広場で突然蹴られたこともあると話すへーディンは、それでも人々が意見を戦わせることはよいことだと話す。

(例えば左党党首ノーシに気に入っている罵り言葉を聴いたこのクリップでは、450のコメントが寄せられている(彼女の答えは「この中産階級!」😅)

www.tiktok.com

予想されていたように投票日を明日に迎えた今も、右派左派陣営は激しく拮抗している。SVTは毎日の政党支持率の推移を更新し続けてきたが、狭い範囲で右へ左へ動いていた票もここにきてほぼ互角のところ落ち着いたようだ。

https://www.svt.se/datajournalistik/val2022/valjarbarometer-dag-for-dag/ より

アフトンブラーデット紙は、昨日年代別の政党支持率に関する記事を出しており、これによると若い世代では左より傾向がはっきりしていて左派陣営は55%に近い支持を集めている。

https://www.aftonbladet.se/nyheter/a/O8pPzw/opinionsmatning-rodgrona-partier-favoriter-nar-unga-valjer より。下のグラフは青が右派陣営、赤が左派陣営

そして若者の間でも、現与党である社会民主党が一番支持を集めていることに変わりはないが、目立つのは左党と中央党への支持の高さだ。左党は社会民主党よりももっとラディカルな方針が、そして中央党はジェンダー平等や人種差別、ヒューマニズムなどを若者にアピールする問題を全面に打ち出した姿勢が受け入れられているようだ。また、国会に議席を確保できるかどうか怪しくなってきている環境党(議席を獲得するには全体の4%以上の票を集める必要がある)も若者の間では7%を超える支持を集めている。

昨日の午後、4000人が集まった気候危機デモでスピーチをしたグレタ・トゥーンベリは、スピーチの後、インタビューに答え「まだどの党に投票するか決めていない」と話していた。今回初めて選挙で投票するグレタは「投票することは気分がよくなるもののはずなのに、パリ協定に沿った政策を掲げている政党がなく、どの党も支持できない」という。それでも投票することはとても大切で、どれかを選ぶ必要があることを強調する。

スピーチではグレタは「私たちに最後の望みがかかっているとよく言われるが、最後の望みがが燃え尽きそうな数人のティーン・エイジャーにかかっているとしたら、その望みは薄い」と訴えた。

この4年間でもあまり進展がなかったことを怒りを込めて話すグレタはまた次の4年もストライキを続けたいとはあまり思わないが、必要なだけ続けるつもりだという。運動にはまだ選挙権のない若者がたくさんいて、その人たちの声を届ける必要があるからだとう。私はとっくに「何も変わらない。これから地獄に落ちるだけ」と諦めてしまっているが、やはり若い人のためには、諦めてしまってはいけないような気もする。

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さて、今回の選挙で私が気になっているのは極右のスウェーデン民主党がスウェーデン第2党に躍進するのかどうかと、今回の投票率は90%に届くかどうか。そして両陣営に差がない場合、首相はいつ決まるのかだ。前回は翌年の1月までもつれ込んだが、今のスウェーデンにそんな余裕はなさそうだけど。

Tiktokの人気アカウント「若者がこれほどまでに政治に関心を寄せたことはない」(SVT)

若者が選べば左派ブロックが勝利する(アフトンブラーデット)

グレタ・トゥーンベリ「まだ(どの党に投票するか)揺れている」(アフトンブラーデット)

© Hiromi Blomberg 2023