選挙の後のこのちょっとどんよりした感じとは自分でも区切りをつけたいと思っているので、もうそろそろ選挙のことばかり書くのはやめようと思うが、最後に、今回の選挙の後で辞任した中央党の党首、アニー・ローブのことを。
まだ40歳にもならないのにこれまで中央党の党首を11年間も努めてきたローブは、先週、辞任を発表した。中央党は大幅に支持を減らしたといっても、党内でも彼女の支持は高く、退陣要求などはなかったので、この発表は突然だった。
記者会見で彼女は、選挙の翌日目が覚めた時「何も起こらなくてよかった」とほっとした、と言い、この選挙期間中もずっと受けていた脅迫や嫌がらせから開放された安堵を率直に表現した。この夏、ゴットランドで行われた政治集会で、長らく行政で働いてきた女性が刺殺されるという事件が起こったが、この犯人はアニー・ローブも殺人のターゲットとしていたことも、その後の調査で明らかになっている。彼女は他にも殺人予告を受けている。
ローブは、快活で明快。エネルギーに溢れ、力強く、フライパンで殴りかかったくらいならびくともしないようなパワフルな政治家だ。私は彼女の政治的な考え方には賛成できないことも多かったが、自分の信じることに対して毅然として戦う姿は、見ていて時に小気味いい。彼女のスウェーデン民主党は政党としてまともに話できないという態度もとてもはっきりしていて、だから攻撃の対象になったのだとも言える。
ダーゲンス・ニュヘテルの社説は、2020年にまとめられた「政治家の4人に1人は脅迫や嫌がらせを受けている」というレポートに言及し、また、ネット上で何をいってもいいか、という「普通の意見」の境界線が、つねに押し広げられていることに警鐘を鳴らす。暴力的で過激な意見が普通になり、中にはそのネット上の憎悪を実際に実行に移す人もでる。
ローブは「長年標的となってきた憎しみのこもったレトリック、特にこの直近の出来事が私に決断させた」と話した。社会を変えたいという熱のある若い政治家は、社会が一番大切にしないといけない人たちだろうに、この先いったい誰が政治家になりたいと思うのか。
アニー・ローブ、脅迫について「被害にあわなくてほっとしている」(スェーデンラジオ)