戦争が勃発したり、領土に侵入される危険を防ぐために、スウェーデン政府は議会の承認を得ずとも、単独でNATOに軍事支援を要請できるようになる。スウェーデン国会はそんな歴史的な決定を今週行う見込みだ。昨日はこれまでスウェーデンのNATO加盟に難色を表していたハンガリーが歩み寄る方向をみせ、トルコとの協議もこれから本格的に再開される予定で、NATO加盟に向けての準備が加速する。
政府は現行法規でも既に、EUに、またNATOという組織ではなく、NATO加盟諸国には、同様の軍事支援を要請する権限をもっているが、今決定されようとしている枠組みではNATOへの要請をも議会の承認を得ることなしに単独で実施できるようになる。
この法案には左党と環境党は反対することが予想されているが、通るのは確実。当初はNATO加盟が承認されてから、この国会での決定を行う予定だったが、今はフィンランドが既にこの国内手続きに着手しており、スウェーデンも同じレベルまで先に準備を進めておくという考え方で進んでいる。
NATO条約には大きなインパクト持つ第5条があり、これはスウェーデンは他の加盟国への武力攻撃をスウェーデンへの攻撃と同等としてみなす義務がある、というもの。しかしこれは、他の加盟国が攻撃された場合、スウェーデンは自動的にその国への軍隊派遣の義務を負うというものではなく、どのような支援を送るかは自国で決めることができ、その場合は今後も国会での承認が必要になる。
ある法案や議題が大多数により可決されることがわかっていても、政府が単独で決めてしまうのではなく、国会で議論されることはとても重要だと思う。この件も反対票を投じようとしている左党と環境党の議員は合わせて42名しかいないが、この人たちのおかげで、なにが問題として考えられるのかの議論だけは、少なくとも公で行われることになる。
エルドアンがどれだけ渋ろうとも、スウェーデンのNATO加盟の日は近づいており、焦点はフィンランドと同時期か遅れてか、の時期の問題だけに限られてきているように思える。
今、現時点でのNATOの加盟国を再度確認したが、30ヵ国もあることに改めて驚く。
加盟国一覧(加盟順)
アイスランド、アメリカ合衆国、イタリア、英国、オランダ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク(以上原加盟国)、ギリシャ、トルコ(以上1952年2月)、ドイツ(1955年5月当時「西ドイツ」)、スペイン(1982年5月)、チェコ、ハンガリー、ポーランド(以上1999年3月)、エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア(以上2004年3月)、アルバニア、クロアチア(以上2009年4月)、モンテネグロ(2017年6月)北マケドニア(2020年3月)(全30か国)
外務省ホームページより
スウェーデンは「中立国」という立場を巧みに使ってこれまで立ち回ってきたが、それでも中立を名乗り、それはそれで(日本が戦争を永久に放棄すると宣言したのと同様に)国としてつけ抜けているよな、と常々思ってきた。自分のことは自分で決めることができる権利を大切に思う一個人としては、残念だな、本当に。