もうみなさんもお気づきかもしれないが、このブログはしばらく前からAIが書いている。取り上げたいテーマの傾向を入力して、これまで書いてきたブログ記事の傾向を分析してもらい、翻訳アプリを間にかませると、毎日スウェーデン語の記事を選び、そこから日本語のブログ記事をアップしてくれる。写真も私が前日に撮影したものから適当なものを選んでくれるし、私の誤字脱字の傾向や絵文字の使い方も、チューニングにチューニングを重ねたので、もうAIが書いたのか、私が書いたのかは一読しただけではわからないはずだ……
というようなことは、私の場合、しばらくは起こりそうにないけれど、AI、特にChatGPTでこれもできる、あれもできるというような話はスウェーデンでももちきりである。
ニュースの話題としてはプログラマーの将来はどうなる? といったものや、学生が不正をしても先生は見つけることができないといったものがあるが、昨日、おお!こんな使い方もできるのか、と思ったのが、パルメ首相殺人事件の真相解明に特化した「Palme GPT」だ。
36年前に起こった当時現役の首相が公道で銃殺されたこの事件は、警察が初期捜査に失敗し犯人がみつからないまま、かといって特別捜査班は解散することもなく捜査は延々と続けられてきたが、2020年に容疑者として通称「スカンディアの男」をあげ、さらにこの人物はもう他界しているため捜査を打ち切る」という、かなりの肩透かしで期待はずれの内容で中途半端な発表をして一応の幕を閉じた。しかしこの事件はこんな驚く側面をもった事件でもあった。
- パルメ殺人事件の捜査は、JFK暗殺事件の捜査に匹敵するほどの規模で、世界でも一、二を争う大規模の捜査が行われてきたこと
- これまでに取り調べを受けた人は1万人に及ぶこと
- 犯人は自分だと公言した人は134人に及び、そのうちの29人は警察に自首したこと
- 現在に至っても、週に2,3の事件解決につながる情報のタレコミ(?)が警察にあること
これほどの事件は、捜査が打ち切られても、高い関心を持つ人は多い。
PalmeGTPは、公開されているパルメ殺人事件に関する資料(palmemordsarkivet.se)を使ってふたりのIT技術者が構築したもので、この事件に関する膨大な資料に目を通さなくても、またあまり予備知識のない人でも、普通の言葉で簡単に質問を投げかけ、これまで警察の調査結果から回答を得ることができる。
興味のある人からはすでにPalmeGPTのライセンスを買えないか、と問い合わせがきているそうだが、製品化するには使い方のトレーニングや、扱っている資料に関する基本的な理解などが必要となり、このまま公開するとこのツールは何をするものなのかを理解されないまま使われてしまうリスクがあり、そのような無責任なことはできないと開発した2人は説明する。
彼らはPalmeGPTはあくまでツールであり「このAIがパルメ首相殺人事件を解決することはないが、このAIを使った人がパルメ首相暗殺事件を解決する可能性は高くなる」と言う。
Palme GPTはChatGPTとは異なり、インターネット全体ではなく、指定されたデータセット(この場合は大量の非構造化データ=スキャンしたPDFファイル)をインデックス化したもので、どの資料をリファレンスしたかもわかる。その点ではChatGTPよりもマイクロソフトの検索エンジンBingの新バージョンとよく似ていると開発者たちは説明する。
さて、この殺人事件に関しては上でリンクをあげた記事以降の情報を書いていなかったが、2020年に検察から捜査うちきりの発表があった後、2021年には、裁判所で有罪が確定するまでは無罪という基本的な人権である推定無罪の原則を侵害したとして、その発表を行った主任検事のクリステル・ペーテルソンを国会オンブズマンが厳しく批判している。
パルメGPTのライセンスをほしいといったのは、もしかしたらペーテルソンなのだろうか?