データセンターの不透明なプロセスと莫大な消費電力
スウェーデンの最北ノールランド地方にフェイスブックなど、グローバルIT企業の巨大データーセンターが続々計画され建設されている。そんな状況に対抗して「これでは今の時代の植民地のようだ」、と反対運動を始めた地元の人達がいる。
例えば、イェーブレ (Gävle) ではマイクロソフトのデータセンターの建設がきまったが、住民たちはアメリカのIT企業が守秘義務などによりデーターセンター建設に関するプロセスをあまり明らかにしないことに加えて、データセンターの膨大とされる電力の消費量に脅威を感じており、建設の差し止めを要求した。
一方のイェーブレの政治家たちは巨大サーバー施設の設置を積極的に誘致してきた。巨大なデータセンターは、その地区のステイタスを上げまた雇用も産み出すと考えているからだ。
冷却な気候と豊富なグリーン電力
はやくも2013年にフェイスブックが北極圏にある街ルーレオ(Luleå) にデーターセンターを建設したように、この地域がデータセンターに選ばれる決め手はその冷却な気候と豊富なグリーンな電力の生産能力にある。加えてスウェーデン政府がデータセンターを誘致するために、データセンター用途での電力使用税を2年前に引き下げたこともデータセンターが急増に拍車をかけた。
今回のイェーブレのマイクロソフトのデータセンター以外にも、近隣ではグーグルが既に土地を入手済み。他にもまだ詳細は明らかにされていないデータセンター用とされる大規模の土地売却話が2件進行中だ。
少し前にアマゾンがメーラルダーレン (Mälardalen)にデータセンターの建設を決めた際には電力使用量が莫大なために、周辺ではそれ以外の新しい施設の建設が制限された。
データセンターをスウェーデンに作る企業側には、豊富な水力発電を誇るスウェーデンでデータセンターをグリーンなエネルギーで運営していることをアピールできることが大きな魅力になる。
水力発電と原子力発電
スウェーデンの電力は、ざっくりいって水力と原子力で支えられている。
データセンターへのグリーンエネルギーの供給が優先されれば、我々スウェーデンの住民は、もう一つの大きな電力供給源である原子力発電への依存度が高まってしまったり、ドイツから火力発電による電力をもっと買わないといけなくなるような皮肉な状況に近い将来陥る可能性もある。
この記事の冒頭に触れた住民によるマイクロソフトのデーターセンターへの異議申し立ては、裁判所で棄却されこのまま建設は進められるが施設の電力消費量の詳細は未だ明らかにされていない。
もしも水力発電所になにかあれば、グローバル企業のデータセンターへの電力供給が優先され、住民への電力供給が制限されてしまうかも? そんな新しいタイプの植民地的な恐怖にさらされるスウェーデンの町はこれからも増えていくのかもしれない。
産業が立ち上がり雇用が増えるだけでは、もういいニュースであるとはまったく言えない、そんな時代を私たちは生きている。
マイクロソフトの進出に不安を募らせる住民「我々は植民地化されてしまう」
スウェーデンの電力については、以前まとめたこちらの記事もどうぞ。