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数字の後ろの物語

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数字、数字、数字。

本来なら人がひとり死ぬということは、その人が築いてきた物語や絆や感情から私たちが切り離されてしまうという、とても大きな痛みとともにやってくる出来事だ。

自分が直接知っている人の死ではないとはいえ、毎日毎日こうした一人ひとりの死者が全部一緒くたにされて「世界全体では死者は合計20万人を越えました。スウェーデンでの死者数の増加傾向はこのグラフからわかる通り……」、といった説明ばかり聞いていると、平気なつもりでいても実のところ心がどんどん削られていっているように感じる。

毎日の状況アップデートの記者会見の時に、例えば「医療の現場は限界までがんばり、力を尽くしましたが、本日は残念ながら80名の尊い命をなくしました。また、大切なご家族を亡くされましたご遺族の皆様には心からお悔やみを申し上げます」とでもいってくれれば、もしかしたら私の心のササクレ具合は減るのかもしれないが、公衆衛生庁の人たちの仕事はそんなことじゃない。

状況をできるだけ正しく(数字で)把握して対策を考えること。それがこの人達の仕事だ。感染症が社会にどんな深い傷を与えるものなのかは、感染症と戦うことを自分の仕事として選んだこの人たちが一番身にしみて知っているはずだ。その傷を少しでも深くしないために冷静に状況判断に徹しているだけなのだから…… と今日は自分に言い聞かせる必要を感じた。命がただの数字となって語られることは、ただそれを受け止めるだけでも精神的にかなりきつい。

昨日はこれまで公衆衛生庁が発表してきた新型コロナウイルスによる死者数を10%ほど上回る数字が社会庁から発表された。数字の違いは、公衆衛生庁は死後検査により新型コロナウイルスに感染してから亡くなったと確認された人たちの数だが、社会庁の発表した数字には、その場での医師の検死でコロナによる死亡と診断された人たちも含まれていることによるものだ。

社会庁は同時に亡くなった方々の約90%が70歳以上で、50歳以下の死者は1%であること、またこれまでの死者の半数はストックホルム圏の人たちで、さらに、亡くなった方のほとんどが、一つかそれ以上の「高リスクグループ」要因に当てはまる人たちだったと発表している。

こうした数字の背後には、亡くなった人たちひとりひとりを巡る悲劇がある。と、ここまで書いてきたらなぜかむやみに涙が出てきた。きっと私の感情の整理に必要だったのだろう。

今朝のルンドは外も雨。そういえば雨が降ると飛沫ウイルスもすぐに地面に落ちるっていってたな。雨となり流れてしまえ、コロナウイルス。

社会庁はより多くの新型コロナウイルスの死者数を発表

© Hiromi Blomberg 2023