これと言った盛り上がり感もなく、昨日気がついたらアマゾンのスウェーデン向けサイトがオープンしていた。
これでスウェーデンの小売業はどうなるのか? といった深刻な話題からは遠く離れて、SNSやニュースサイトを盛り上げたのは、おそらく自動翻訳によるものと思われる不適切な単語の大量使用。「ペニス」や「レイプ」という言葉があちこちの商品広告に現れるとんでもない事態になってしまった。「レイプカーテン」や「大きなペニスの絵画」がここかしこで売られてしまうことに。
このスウェーデン向けのサイトは1億5000万点の商品を販売しているが、そのうち数万点がスウェーデン企業からの提供で、それ以外は他国のサイトから転載されている。
商品説明を大量に自動翻訳した際に、例えばスウェーデン語で「菜の花」を意味する「raps」という単語へ訳されるべき箇所でそれが「レイプ」を意味する「våldtäkt」へになってしまったり、スウェーデン語で「雄鶏」を意味する「Tupp」となるべき英語のcockという単語が「ペニス」を意味する「Kuk」へと翻訳されてしまったりと、他にも差別的表現が入り込んだりするひどい混乱状態になっている。
これを、広告なしに人々の話題になるようにわざと間違うことによるPR戦略では、という声も上がったようだが、多くの人の見方は、翻訳アルゴリズムのミスによるというもの。アマゾンは専門家をいれてサイトオープン前に翻訳をチェックすることよりも、間違いを消費者に見つけてもらい、指摘された箇所を訂正していくことで、翻訳機械学習アルゴリズムの精度を高めていく方法を選んだようだと分析している。そう、私たち消費者はこれからアマゾンにたっぷり働かされる運命にあるのである。
一旦、笑っちゃう誤訳の話を離れて、肝心のサイトの使い心地や品揃えはどうかというと、こちらもスウェーデンのEコマースの専門家は一様に「たいしたことない」と評価する。ごちゃごちゃして使いにくく、品揃えも値段設定も的外れのものも多く「アマゾン」という看板がなければ誰もそのサイトで買い物しないくらいの低レベルのようだ。
しかし、年末のギフトシーズンに間に合わせようと大急ぎでサイトをオープンさせたのであろうアマゾンは、そんな批判をきっとどこ吹く風で受け止めているのに違いない。
消費者やEコマースの専門家が、ここが使いにくい、ここが間違っていると指摘する度に、その修正・改善を通してスウェーデン向けにしっかり誂えたサイトを構築していくことができるわけだから。
私はこちらの記事(アマゾンはスウェーデンで何を壊すか?))を書いてからスウェーデンにアマゾンがきてもそこで買い物したりしないぞ! と決めている。ほんのちょっと前までは、いつも大変お世話になっていますと、あんなに感謝していたのにね。