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「8人」とは?

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新型コロナウイルスの感染が急拡大するのに、春先と同じようにはならない人々の行動変容にしびれを切らしたスウェーデン政府が昨日発表したのは「8人を超える公共の集まりの禁止」だ。昨日の記者会見でロベーン首相が11月24日からの禁止の発令に向けて手続きを開始したことを伝えた。

公共の集まり、とは一般に開放されていて誰でも参加することのできる類のもので、例えば、観劇、デモ集会、セミナーやコンサートなどを指す。このようなパブリックな集まりで8人を超える人が集まってしまった場合、警察は集会を取りやめさせることができ、責任者は罰金や懲役などの罪に問われることもある。

一方、個人が行うパーティーや企業が限定した対象者に対して行うイベントなどは、現在の法規ではスウェーデンの政府はこれを禁止することができない。ジムや図書館、レストランなどの営業の禁止に関しても同様に行うことができないそうだが、「8人以上の公共の集まり」を禁止することで人々の行動がすべての側面で変容することを政府は期待している。既に図書館などは運営している地方自治体の独自の決定で閉鎖されているところもある。

今回の決定について取材を受けたダムベリ内務大臣は「社会のすべてを閉鎖してしまうようなことはスウェーデンでは法規上できないが、それでも春には人々の自主的な行動で大きな効果がでた。今回(の発令で)伝えたいことははっきりしている。人との接触をさけてほしい」と話している。

「8人を超える」とも言っても、なぜ8人で、10人でも7人でもないのか?という点に関しては、例えば疫学的な根拠はおそらくないだろうから、今回の決定には「8人」という数字をスウェーデン人がどう受け取るかといった社会的、心理学的な研究結果などが考慮されたものかもしれない(←まったく勝手な憶測です)。確かにそれほど多くもないし、少なくもないけど、集まっちゃだめなことはわかる。

さて、話は少し変わるが、昨日SVTのサイトにマスクに関する世界中の研究とそれをとてもわかりやすく解説したカロリンスカ大学病院の疫学者フアン・ヘスス・カレロさんの動画が掲載されていたのでリンクを貼っておきます。(動画は英語ですのでぜひ)。

Hjälper munskydd mot corona? | SVT Nyheter

私がざっくり理解した限りでは「マスクが飛沫を防ぐことははっきりしている。だが、それが公共の場でどのように効果を持つかについてははっきりしたエビデンスはない。しかし、目下ドイツなどでマスクに関しての規制が異なる自治体を比較することなどにより知見が集まりつつある。逆にマスクをつけることで目鼻を必要以上に触り、感染の危険が増すという指摘を裏付けるエビデンスもない」ということのようだ。

この記事を読んで残念だなぁと思ったのは、先日このブログにも「なぜスウェーデンはマスクを推奨してコロナを抑えている韓国や日本のやり方に学ばないのか?」という主旨のコメントをいただいたのだが、この記事によるとアジアでのこの手の研究はとても少ないらしい。アジア発のものでよく参照されるのは中国とベトナムの3つのものにほぼ限られているそうだ。これまではわざわざ研究しなくても、社会的に(?)効果を理解しているので、科学的な研究は行われてこなかったということだったのだろうか。

独裁的にトップが説明もなしに政策を決めることができるのであれば、その決定の根拠となるエビデンスを明らかにする必要もないのだろうが、多くの国では普通は説明が必要だ。

日本は、日本のすばらしいやり方を世界中に広めることもできると思うが、説明できるものにすることができなければ世界に影響力を発揮していくことはできない。これまでは多くのノーベル賞受賞者を輩出するなど目覚ましいものがあったと思うけど、今「学術」を軽んじていて、この先大丈夫なんだろうか? (ちょっと話題がそれちゃってすみません)

政府発表・集まりは最大を8人とする

ダムベリ内務大臣「伝えたいことははっきりしている。人との接触をさけて」

© Hiromi Blomberg 2023