2020年、スウェーデンで「本」は売れに売れた。
紙の書籍の販売数は2350万部だったが、電子書籍、オーディオブックをあわせた「デジタル本」の販売数は初めて紙を上回る2900万部となり、「本」全体の販売部数は記録的な数字となった。デジタル本分野だけをみると2020年は2019年と比べて販売部数で35%増加した。
売上額をみてみると「本」全体では前年比で9%伸び、2020年は約50億クローナ(約635億円)レベルまで大きくなった。しかしお金を稼いでいるのはまだまだ紙の書籍で、業界全体の売上の多くはEコマースで販売される印刷本の販売によるものだ。しかしここでも急成長しているのはデジタル分野。特にオーディオブックの売上が伸び、2020年では業界の総売上の4分の1を占めるに至った。
月額課金のスポティファイが音楽の聴き方を変えていったのと同様、オーディオブックもサブスクリプション方式のサービスが伸びている。しかし、今日の記事には書かれていなかったが、オーディオブックは音楽業界がレコードやCDからデジタルへと変わっていった時と同様、現時点では全体的に著作者への利が薄い構造になっている。さらにはスウェーデンの出版社とオーディオブックサブスクビジネスの間の取り分配分問題もある。このあたりの事情に関しては、以前まとめたこちらの記事をどうぞ。
オーディオブックのビジネス論争 swelog weekend - swelog
スウェーデンのオーディオブック・サブスクサービス最大手StorytelのCEO、ヨーナス・テランダーは、これまでになかったポジティブな傾向も指摘する。
彼は「これまで本の売上は発売された直後に売れて稼ぐといったものだった。昨年オーディオブックがこれだけ伸びた要因の一つはみんなが以前に出版された本を改めて聴き始めたからだ」という。確かにデジタルであれば在庫管理もなく一回電子ファイルにしておけば、あとはロングテールで売上が伸びていく。
デジタル化の波がやってきた時にレコード業界は、「音楽業界」という名称に統一されることで問題はなかった。新聞社も、私は今のところ「ニュースメディア」という言葉を使うことでなんとか乗り切っている。しかし「出版業界」はこの先なんと呼べばいいのだ! 「本」と「電子書籍」と「オーディオブック」、うーん、「テキスト業界」😅?