急速に広がったコロナ禍の不安の只中で「第二次世界大戦時以来の経済危機となる」との見方が優勢であったのが、昨年4月。当時、スウェーデンではGDPはマイナス10%程度の成長率となるのではと多くの経済評論家が考えていたが、実際に2020 年の統計結果がまとまってみると、経済成長率はマイナス2.8%という数字にとどまった。
飲食や観光業界では500億クローナ(約6350億円)の売上がなくなり5万人が失業したが、この業界が全体に占める割合は小さく、スウェーデンの経済全体でみるとコロナで受けた打撃は予想されていたよりも遥かに小さかった。それどころか、他国と同様、株式市場や不動産市場ではバブル気味な状況も続いている。
雇用状況をもう少し詳しく見てみると、全体の失業率は予想されていた11%にはならず、9%以下という数字でとどまる見込みだが、ここで一番打撃をうけたのは若者や移民だ。飲食や観光の分野で最初の職を得てから労働市場にでていくことの多いこの層が、第一歩を踏み出すことができずにつまづいた。失業している状態が一年を通して続いた人は20万人に上るとスウェーデン国家債務管理庁(Riksgälden)は見ている。
結局、コロナ禍でスウェーデン中央銀行が繰り出した5000億クローナ(約6兆4千億円)の企業向け貸付金や、政府の2000億クローナ(約2兆6千億円)に及ぶ各種支援金が効果を及ぼし、産業は継続することができたということのようだ。
さらにはスウェーデンの国家債務はこれだけのコロナ危機対策支出を行ったあとでもそれほど増えていない。パンデミック前は対GDP費で35%だったのが38%に上がる見込みだが、2018年の同数字は38.9%だったので、その当時から見ると改善(?)しているくらいだ。
こうやってみてくると、コロナ禍で特に厳しい状況を強いられた飲食、観光業界を支援するという意味では、日本政府のGO TO トラベルやGO TOイートの政策の方向性もあながち間違いではなかったのかもしれない。でもお客さんを物理的に国内を移動させたりお店に送り込んだりするのではなく、持続化給付金などを各店舗、各企業の規模に合わせた形で行うことができればよかったんだろうな。残念。