スウェーデン政府と中央党、自由党がこの度共同でまとめたのは「2021年−2025年総合防衛計画」。ここでは2021年から2025年にかけて270億クローナ(約3250億円)の防衛関係費の追加投資がまとめられており、これは約40%程度の防衛費の増加となる。計画を発表したペーテル・フルトクヴィスト防衛大臣によると、これは1950年代以来の防衛費レベルだそうだ。
この新しい計画に伴い、防衛費が削減されていた時代には廃止されていたいくつかの軍事施設が再度装備されることになる。その中にはスウェーデン語でレジメンテンと呼ばれる軍の訓練用基地があり、スウェーデン中部のソレフテオに今回再び設置されるレジメンテンなど、具体的に想定される危機に対して地理的に重要な場所が多い。
例えばバルト海諸国でロシアとの軍事衝突が発生し、アメリカの海軍部隊がノルウェーからスウェーデンを抜けて東に進むことになれば、ソレフテオは重要な拠点となる。スウェーデンはNATOには加盟していないが、近年その協力体制を強めてきた。
しかし、ノルウェーに上陸してやってくるはずの肝心のアメリカ海軍はドナルド・トランプが首相になってからは、バルト海周辺での軍備をロシアが抗議するほど増強してみたり、また突然削減してみたりとその方針に一貫性を欠く。11月3日の大統領選挙は、その結果次第でスウェーデンの防衛計画にもまた大きな影響を与えそうである。
このニュースに関して、スウェーデンとNATOと関係を解説した記事には「ノルウェー山中にアメリカ海軍15000人、30日分の装備と食料が隠されており、これは冷戦時の1980年代につくられた」とか、「スウェーデンでもこのアメリカ海軍との協力体制は1969年のオロフ・パルメ首相の時代にベトナム戦争を契機として始まった」といったことが書かれおり興味深い。お時間のある方はぜひ。
また、別記事で、このところ人口減少が続いて厳しい財政状況が続いていたソレフテオ市政が、レジメンテン再設備決定のニュースに「これで雇用が戻ってくる。未来に希望の星が見える」とコメントしていたのが印象的だった。