コロナの影響でニュースの需要は高まっているのに、ニュースメディアの経営はこれまで以上に厳しいものになっている。観光や旅行、さらには文化イベントなど、これまで新聞社の経営を支えてきた広告がまったく入らなくなっているからだ。
文化担当大臣のアマンダ・リンドは昨日の記者会見で、ニュースメディアへの政府補助金の追加予算として5億クローナ(約55億円)を投入することを発表した。予算はこの後国会の審議を経て決定、その後迅速に各メディアに届けられる予定だ。
スウェーデン政府は常時より、年間予算の一部として毎年2億クローナ(約22億円)の報道機関補助金を計上しているが、今回の緊急予算はコロナ危機を乗り越えるために必要と判断されたもので、通常は報道補助金の対象にはなっていない地方の無料タウン紙なども含まれている。
民主主義担当大臣でもあるアマンダ・リンドは「この状況下でニュースメディアが機能することは民主主義に非常に重要である」と記者会見を締めくくった。
私は今このニュースをSVT(スウェーデン公共放送)のニュースサイトで読みながらブログを書いているのだが、SVTは長らく世帯別に徴収される受信料で運営されていた。去年からこれが放送税での運営方式に変わって、運営に関わる費用は国民一人ひとりから税金として徴収されるようになった。
受信料から公共放送税へ - swelog 今日のスウェーデンのニュース
国民のSVTへの信頼度も高いが、よって注文も多い。私が今読んでいるニュース記事の横にはSVT国内ニュース報道局の責任者のコメントが表示されているが、そこには「いいえ、私たちは決して手綱を緩めたりしません」と書かれている。
この発言の裏側には、視聴者からSVTに寄せられる特に最近目立つ苦情がある。「国家の危機に政治家や行政のやることをいちいち責めたり揚げ足をとったりするのはやめたらどうだ」という種類のものだ。今は国民が一丸となって危機に向かうべきで、その担当者を責めるなという主旨の意見だ。
けれど、SVTからの回答ははっきりしている。
「(政治家や行政の)説明責任を求め、それを批判的な態度で精査することはジャーナリズムの根幹をなすものであり、国家の危機だからといってその必要性が減ることはありません。いや、それどころか重要性はより増すでしょう。コロナ危機の今だからこそより、国家権力や行政で何が起こっているのかをきちんと報道しなければならないのです」と。
NHKが同じことをはっきり言えるような報道機関になればいいと心の底から願う。あ、なんだか、情けなすぎて涙がでてきた……