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MMT・現代貨幣理論とスウェーデン

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今日はスウェーデンのニュースではなくて、スウェーデンではニュースになっていないことについて書こうと思う。MMT(Modern Monetary Thoery)こと、現代貨幣理論についてだ。

MMTに関しては日本では時々ニュースになっているし、見解を公表している学者も政治家も多いので、どのような理論なのか、またMMTをめぐる論点は何なのか、まだご存じない方は少し検索していただければ幸いだ(←とかいって、ちゃんと説明できる自信がないのでした。すみません。)

つい先日この現代貨幣理論の第一人者といわれるステファニー・ケルトンの著書の日本語訳も発売されたようなので、これを読んでみるのもいいかもしれない。

またその名も”わかりやすい用語集 解説”というのがあったので、こちらもよければどうぞ。

独自通貨を持つ国は債務返済のための自国通貨発行額に制約を受けないため、借金をいくらしても財政破綻は起きないと説く経済理論。英語表記「Modern Monetary Theory」の略でMMTともいい、現代金融理論と呼ぶ場合もあります。この理論では、巨額債務があっても、インフレを抑制すれば、社会保障やインフラなど公共サービスの拡充は可能だと訴えています。

わかりやすい用語集 解説:現代貨幣理論(げんだいかへいりろん)|ラーニング|三井住友DSアセットマネジメント

日本では2019年くらいから、MMTに関して国会議員が国会で質疑を行い、麻生財務大臣がMMTの考え方は危険でそのようなものを使う考えはないとはっきり答えたり、日銀総裁もMMTの論点は極端で受け入れられないとコメントを出している。

しかし、コロナ禍で国家財政はさらに苦しくなるのではというシナリオに沿って、これからもMMTの考え方を日本で推進しようとする政治家は減らないはずだ。この先もニュースの論点としても取り上げられていくだろう。

一方、スウェーデンはコロナ禍で数々の経済、生活支援策が国から提供された際にも財務大臣が「スウェーデンの財政状況はとても健全でコロナで支出が増えても大丈夫」と言っていたし、また、高い税金、高い公共事業の提供レベルという収支の辻褄合わせの原則の上に成り立っている社会なので、MMTの議論は私の知る限りこれまでニュースでみたこともなかった。

でも、本当にそうなのか、ちょっと気になったので、スウェーデンのニュースメディアがこれまでMMTを取り上げてこなかったか、を少し時間をさかのぼって調べてみた。

主なメディアでMMTを取り上げていたのは新聞2紙。

ダーゲンス・ニュヘテルは、上記に紹介したステファニー・ケルトンの著書がスウェーデン語で出版されることが発表された昨年10月に、彼女の自宅を訪問して長いインタビュー記事をまとめている。もうひとつはスウェーデンの経済誌ダーゲンス・インダストリの記者が、12月にその出版された本を読んで書いた批評だ。

批評の方は私は全文を読んでいないが「MMTが約束するバラ色の効果は、実際には絵に描いた餅でしかないだろう」という趣旨のようだ。

そしてケルトンのインタビューの方は読み進めると、彼女は自身の理論が間違っていない証として「日本は世界で一番多くの財政赤字を持つ国でありその国の借金の半分を日銀が背負うが、経済が破綻しておらず、インフレも起こしていない」と日本をまるで現代貨幣理論が立証された国のように紹介していた。

ふむ、日本でインフレが起きていないのは企業の内部保留などが多くてお金が循環していないからなのではないかと単純に思う。MMTの理論が間違っていない証明になるのかもしれないが、日本の経済格差の問題をまず考えずにはいられない。国がお金を発行しても困っている人のところにちゃんとお金が巡るのだろうか?

また、国が通貨を発行して国民が必要をするサービスを提供する場合、国からのお金の流れが公正であることが日本の場合はもっと必要だと思う。国はお金を調達してアベノマスクを配ってくれたのかもしれないが、そのサービス提供時に私服を肥やす人がいるようではだめだ。

現代貨幣理論がこの先日本で使えるものになっていくのかどうかは、私にはわからない。でもそんな打出の小槌でお金を大判振る舞いするようなことは、せめて国の支出の透明性を高め、国民が不審に思った時には問いただせて、そしてきちんと回答するような政府ができてからにしてほしい。

あれ、MMTとスウェーデンについて書こうと思っていたのに、日本の政権担当者の答弁に関する不満になってしまった。すみません。

お金はいくらでも樹に実ると主張するエコノミスト(ダーゲンス・ニュヘテル)

なんでも可能と言い過ぎる理論(ダーゲンス・インダストリ)

© Hiromi Blomberg 2021