swelog ニュースで語るスウェーデン

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スーパーマーケットが脱プラしてみたら! swelog weekend

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(今日noteに掲載した記事と同じ内容です)

「脱プラ、ノープラ、プラなし」。プラスティックごみ問題の深刻化に伴い、プラスティックをなるべく減らした暮らしを実践する人も少しずつ増えてきた今日この頃。スウェーデンではスーパーがプラスティックを使った製品を棚からすべて取り除くという事態が発生! さて、どうなった?

 

一晩でスーパーの棚が空っぽに

10月29日火曜日の朝、ストックホルム郊外のとあるスーパーマーケットにきた人たちは驚いた。いつもは食品や雑貨でいっぱいの棚が空っぽになっていたからだ。

このスーパーでは、前日夜10時の閉店時から朝の2時までの間に、包装にプラスティックが使われている商品をすべて棚から取り除いてしまった。残ったのは果物や瓶詰めや缶詰、紙袋に入っている小麦粉などほんのわずかな商品だけ。

インスタントコーヒーのようにガラス瓶に入っていても蓋がプラスティックだったり、一見、紙の箱でもその中にまたプラ袋があるといったものもすべて除いてしまうと、このスーパーで扱っている5005品目の実に93%にあたる4671品目が棚から消えた

下のビデオ(3分9秒、英語音声・英語字幕)ではこのゲリラ的プロジェクトの様子をみることができる。

企画者も買い物客も驚いたプラスティックへの依存度

この「プラなしスーパー」を実現させたのは、スウェーデンのa good companyというスタートアップ企業。私たちの毎日の生活がいかにプラスティックに依存しているかを広く消費者に理解してもらうために行った企画だ。

舞台となったスーパーは、スウェーデンの最大手スーパーチェーンICAのお店の中でも小規模店フランチャイズのICA Nära Annedal。「プラなしスーパー」はこの日の朝7時から9時までの限定で実施され午後には通常の営業に戻ったそうだが、この短時間の「プラなし状態は」テレビや新聞でも取り上げられちょっとした話題になった。

a good companyは持続可能な消費生活への啓蒙と製品販売を行うスウェーデンの会社で、具体的には自分たちで開発した石からできた紙を使ったノートや、竹でできたカテラリーセット/ストロー/歯ブラシ、またペットボトルを減らすためのウォーターボトルといった製品を自社サイトで販売している。

この”びっくりカメラ”のような朝を企画したCEOのアンデーシュ・アンカールリッドは、自身も小さな子どもを持つ父親であり毎日の買い物で大量のプラごみがでることから、私たちはどれくらい依存してしまっているのかを単純に知りたくなりこの「プラなしスーパー」を実現させた。

やってみて、ほぼ空っぽになってしまった棚をみて驚いたのは彼だけではなく、スーパーの従業員もやってきた客も同様に強い衝撃を受けた。しかし客のほとんどは買いにきた商品が棚になかったにもかかわらず、企画の意図を知り驚きはしたもののこれを現実を捉える機会として楽しんだようだった。

少し気をつけるとどんどん減らすことのできるプラごみ

スウェーデンの私の暮らしでも、京都の実家に帰った時でも、プラスティックのごみは気をつけていないとあっという間にたまってしまう。しかし、ちょっと気をつけるだけでかなり減らすことができるもの事実だ。スーパーのレジ袋以外にも他のお店でもらうショップ袋を断るとか、プラ容器に入った飲み物、お弁当は買わないようにするとか、小さな心がけで大きな差がでる

(小さな心がけで京都で敏捷力を鍛えた話↓)

昔の乾物屋さんのように、マイ容器を持ち込んで必要な分だけ食品を買うことのできるお店は、スウェーデンでも日本でも少しづつ出現しているが、そこまではできない、したくない人もほんの少し気を配って選択するだけでプラごみはどんどん減っていく

(こちらはスウェーデンのマルメの食品量り売りショップGram紹介ビデオ。画像もGramの店内写真)

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(こちらは京都の昔ながらのお肉屋さんw)

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生分解プラスティックや他の包装材もどんどん増えている

プラスティックの使用総量を減らすことはもちろん必要だが、食品だけに限ってみてもプラスティックにしかない衛生、保存、運送上の利点がある。今すぐプラスティックをすべてやめることは現実的ではないが、必要のないプラスティックはどんどん排除していくことはとても大切。さらに今後は、従来のプラスティックを代替できる素材の研究がますます進みそうである。

私はスウェーデンのニュースウォッチをして、未来の景色を変えてしまうような面白い動き見つけては毎日ブログに書いているが、この1年だけでも「リンゴからできていて最後には食べることのできる使い捨て(食べ捨て?)食器」や「木からできたプラスティク」など、興味深いものがいくつもでてきた。

日本はプラスティック問題課題解決先進国になれる、と思う!

また、日本にいるとあまりにも当たり前すぎて感動する人もいないと思うが、海外に住み始めると日本の食品パッケージ技術がどれほど優れているかに改めて感心する。鮮度を保つため、また開封したあともきちんと保存できるように、恐ろしいほどに気配りされた(時には無駄な!)最新で細心な配慮が至るところに施されている。

今はこの配慮が「少しでも新鮮な状態でおいしいものを届ける」という目的に特化されているように思うが、こんなことができる日本人にプラスティックごみ問題も解決するパッケージ技術の開発をやってもらうと世界をリードする技術革新が起こる! と私は信じたいし、日本がプラごみ問題の輸出国ではなく課題解決先進国になってほしいと、心から思う。

京都で母にゴミの分別のやり方を教えてもらうたびに(もしくは「ダメ出しされるたびに」笑)、こんな結構ややこしいことを行政側も生活者側もわりと普通にできるのであれば、少し活動の方向性を変えるだけで、日本だから、日本人だからできることはものすごくたくさんあるように思える。(スウェーデン人はこんな細かいごみの分別はできないので、その大雑把さを最初から考慮して処理している)

ノープラ生活で生まれるコミュニケーションと未来

少し前にNHKのディレクターが「ノープラ生活」をやってみた番組のまとめがすごかった。プラごみ問題に興味のある人で、まだこのサイトをチェックしていない人にはぜひ一読されることをおすすめする。

しかしもっとすごいのは、この記事でも「学生さんに「プラスチックをちょっと注意しながら生活してみなさい」と言ったところ、今までの半分以下の使用量で済んだ」ということが報告されていることだ。ほんの少しの意識づけでやはりプラごみはかなり減るのだ。

日本でもスウェーデンでも、プラスティックを減らす生活についてもっと知りたい人は、こちらの「プラなし生活」のホームページインスタグラムがインスピレーションを与えてくれるので、おすすめだ。

上の「ノープラ生活」に取り込んだNHKのディレクターが「ノープラをやることで、自分が住む街を知ることができた。これまでになかったコミュニケーションがあった」とまとめているのもなかなか興味深い。利便性優先の生活ではないので、自分でいろんな工夫や準備も必要になり、脳も活性化されることも私が保証する。

興味をもってここまで読んでくださった皆さんは(ありがとう!)、次にコンビニやスーパーに行ったら、ぜひプラスティックが使われていないパッケージを探してみてほしい。一体どれくらい見つかるかな?

© Hiromi Blomberg 2023