爆発的に増加しているオンライン診療
派手な広告マーケティングの効果もあってか、KryやMin doktorといった長い待ち時間なしに医者とすぐにつながるオンライン診療の利用は、今年55万件となった。2017年の約20万件と比べても驚くほどの伸びだ。
問題は、スウェーデン全体の医療費予算は限られているので、オンライン診療にもっていかれた分は、従来の医療センターでの診察に割り当てられていた予算から差し引かれていくような形になることだ。
大都市の若い層が医療予算を奪っていく
医者との面会はコスト高でもあるため、スウェーデンでは病気になっても看護師によるアドバイスで済むとみられる場合は、医者と会うこともない。必要があると見なされた場合のみ医者のリソースが投入される。限られたリソースをより緊急度や重度の高いケースに割く必要があるためだ。
先にあげた新しいオンライン医療アプリを使うのは、主に大都市に済む若い層で、気軽ちょっと調子が悪い時にも簡単にアプリを使って医者とすぐ直接話せ、最適な薬などを瞬間に処方してもらえるサービスが受けている。
その層からはサービスを褒め称える感想ビデオがSNS に多くアップされ、それを見た人がますますオンライン診療を手軽につかうことになる。
本当に必要な人に医療が届くのか?
今年はオンライン診療で、既に5億クローナ(約62億円)が請求されており、これはこれまでの診療センターでの費用と相殺されたというよりは上乗せされた費用で、従来であれば優先されていたもっと重い病気の患者、オンライン医療のかやの外にいる高齢者などに割かれるべき治療費用に影響を与える。
この傾向が最近あまりに急に顕著になったため、医療従事者の団体や政府内からも事態を懸念する声が聞こえてくるようになった。
税金が使われている以上、優先順位の問題は常につきまとい、誰にとってもパーフェクトな費用配分のバランスはない。問題が起こるたびに、議論を続けて続けて、また続けていくこの面倒くささを避けては、安心して暮らせる社会基盤はつくれない。