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パンデミックでどこまでも伸びるスウェーデンのフィンテック

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スウェーデン発のスタートアップ、フィンテックの星、クラーナ(Klarna)が絶好調だ。この度発表された2020年の数字ではパンデミックの中、さらにビジネスを伸長させた。

フィンテックとは決済方法や、商取引、証券取引などに関わる新しいIT技術を使った金融関連サービスのこと。またこちらの説明もどうぞ

FinTech(フィンテック)とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan

お金がない人もモノが買える(!)後払いや分割決済サービスを提供するクラーナは、パンデミックで活況するEコマースを追い風に、その売上を2019年の約70億クローナ(約890億円)から2020年では100億クローナ(約1300億円)へと伸ばした。

これまでも記録破りの投資を受け続けてきたクラーナは、つい先日もまた新たな投資ラウンドを経て、その株式評価額はスウェーデンを代表する大手銀行ハンデルスバンケンの2000億クローナをはるかにしのぐ、2640億クローナ(約3兆3400億円)となった。クラーナの売上は伸びたが、現在の業績は赤字であるにも関わらず、だ。

クラーナはうっかり支払いを忘れた人への延滞金の請求や、分割払いの際の手数料を細かく集めるというビジネスモデルだが、その手法に問題点もあることは、これまでも指摘され続けてきた。直近でも、スウェーデンの消費者庁が、クラーナは分割払いする必要のない顧客までを分割払いするよう誘導しているとして、改善を求めている。

うっかりしてしまったことで、本当は必要なかった手数料を払う羽目には陥りたくないケチな私は、Eコマースの決済手段ではクラーナを選ぶ以外の選択肢がないようにみえるような時も、下のほうからカード決済の選択肢を探してきてそれで支払うようにしている。

しかしこれはムダな抵抗のようで、この間クレジットカードでの支払いを返金してもらおうとしたらクラーナから連絡がきた!もうスウェーデンではクラーナとは無縁では暮らせないのかもしれない? クラーナの魔の手(?)から逃れたかったら残るは現金払いのみか?

さて、今日参照しているダーゲンス・ニュヘテルの記事の中では、クラーナの他にもTrustlyも紹介されていた。こちらはデビットカードを使わなくても銀行口座から直接決済できるサービスだ(スウェーデンではクレジットカードよりデビットを使う人が多い)。

それって銀行振込というのでは? と思ったら、これは銀行のサービスではなくて、Trustlyが勝手に支払いを手配してくれるというものだそう。きっとこれまでのシステムの盲点をついた手法らしく、Trustlyは2020年には売上を前年比で42%伸ばして20億クローナとした。さらには40%を超えるという驚きの利益率を達成している。

クラーナもTrustyも、その業績や売上はともかく、大型IPO(株式公開)がもうすぐだと囁かれていて周囲が騒がしい。なんだか、やっぱりちょっとパブルっぽい。両社とも、きっと血のにじむような努力とキレキレの賢さでサービスを築いてきたんだろうけど、貧乏人から薄く広くお金をかすめて、一部の投資家がさらにお金持ちになっていくというイメージがつきまとうな、私には。

多くのハイテク企業で2020年は非常に業績のよい年に(DN)

© Hiromi Blomberg 2023