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院内感染と謝罪のない記者会見

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「スウェーデンでは院内感染はどうなっているのですか?」という質問を何度かいただいたのだが、これまでは高齢者施設での感染拡大に関するニュースに比べると、院内感染に関して目立った報道はなかった。

昨日、スウェーデンの一地方であるクロノベリの地域基幹病院の責任者は記者会見を開き、一つの病棟から院内感染の可能性がある感染者が18名でたと発表した。18名の平均年齢は80歳で、このうちの4名は既に亡くなっている。

18名はこの病棟内で(コロナではない既往症で)手当を受けたあと退院し、その後新型コロナに感染したことがわかった。同時期に病院の外の通常の社会でも感染は拡大していたので、院内感染が唯一の原因とは特定できないものの、その可能性があると報告された。

また、同病院内で同時期に15名の医療従事者の感染が確認されていることも合わせて報告されたが、当時は病欠などで院内の医療従事者が圧倒的に不足した状況で、通常であれば当然取られているべきであった最低限の衛生管理がおろそかになっていた可能性があるとも指摘された。

基幹病院では、既にこの病棟の人員不足を解消し、さらに医療従事者向けに再教育を行うなど、現時点で手をつけることのできる対応策をとったと話している。

4名の方が亡くなったという重い事実も入ったこのような記者会見が日本で行われたのなら、まずは責任者の謝罪からはじまりそうだな、と思った。ニュースでは会見のすべてを放映したわけではないが、院内感染が原因であると決まったわけでもないので、おそらくこの責任者は謝罪はしていないと思う。

亡くなられた方のご遺族の気持ちを考えると、誰かがここで謝まればいいのにとも、心の隅で思ってしまう私もいる。

でも、ここではなにが起こったかの事実を伝え、現時点における分析結果とそこからどういう改善策をとるのかに関する具体案を説明することが重要だ。そこがなくて、ただ謝罪するだけの記者会見は誰かの気持ちは収まるかもしれないが、なにも改善しないのだから。

同病棟から18名がコロナ感染・4名が死亡

© Hiromi Blomberg 2023