世界最大の「死の海域」、バルト海中央部(Baltic Proper・Egentliga Östersjön)の超低酸素状況が改善されない。1999年頃から観測されている超低酸素状況は2020年も改善は見られなかった、とこの度スウェーデン気象庁が発表した。
スウェーデン語では東海(Östersjön)と呼ばれるバルト海の広い領域の中でも、オーランド島南端からデンマークの海岸にかけての深部はBaltic Properと呼ばれるが、この地域を取り囲むスウェーデン、フィンランド、バルト三国、ポーランドにドイツ、そしてデンマークの各国の沿岸では多くの人が暮らし、河川も多く、大量の産業、農業、そして生活用水が流れ込む。
特に農業からの排水には肥料など多くの養分を含んでおり、これが藻・バクテリアの大発生を促し、海中の酸素が大量に消費される。低酸素状態となった海では他の生物が窒息してしまい生きてはいけない、というのが、「死の海域(デッドゾーン)」と呼ばれる所以だ。
(繁殖する藻・バクテリアに関してはこちらの記事もどうぞ バルト海のアオコ、シアノバクテリア - swelog)
バルト海は、スウェーデンとデンマークの間の非常に細いエレスンド海峡などデンマーク海域で外海に向かって僅かに開いているだけで(隣接している北海へはカテガット海峡をぐるっとまわらないと到達しない)他の海域からの海水の流入が極端に少なく、メキシコ湾沿岸など世界の他のデードゾーンと比べても、特に問題が凝縮された場所になっている。
上の地図で赤は無酸素、黄色は酸素が欠乏している状態を表す。Foto:SMHI/Torbjörn Johanssson
ああ、バルト海よ、元気になってくれ、と思っていたら、昨日は、気候変動と土地活用方法変化の影響でスウェーデンの極北ではヘラジカが危機的状況に陥る可能性が、というニュースもあった。冬の間の食べ物が見つけにくくなっており、餓死してしまうヘラジカが増える可能性があるらしい。
うーん、こんなに危機が迫ってきているのに、その実、今年もまた暑くて気持ちのいい「いい夏」がスウェーデンにやってくるのだろうか? こういうのなんていうんでしたっけ? 茹でカエル🐸?