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アルフォンス絵本シリーズとその時代性

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スウェーデンで550万部、約30ヶ国語に翻訳された外国では400万部以上を売り上げた人気のアルフォンスシリーズの作者、グニッラ・ベリストロムが水曜日に亡くなった。79歳だった。

新聞記者としてキャリアをスタートした彼女は、世界中で人気のキャラクターとなった男の子、アルフォンス・オーベリの最初の絵本「おやすみ アルフォンス」を1972年に出版。以後アルフォンスのシリーズは26冊に及び、テレビのアニメ番組にもなった。

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私もスウェーデンに引越してきてまもなく、スウェーデン語がまだ子どもレベルでもなかった頃、アルフォンスの絵本を手にとり、そのアナーキーさ、というか、自分が勝手に描いていた「絵本ってなんとなく道徳やお手本みたいなものが描かれている」という思いが見事に打ち砕かれたことがある。なんと表現したらいいのかわからない、驚きにみちた読書体験だった。

アルフォンスと二人で住んでいるアルフォンスのお父さんは、ダボッとしたセーターを着て、パイプをくゆらせ、絵本を読んでもなかなか寝つかないアルフォンスをおいて、ちらかった台所の床で寝てしまう…… 誰のお手本にもならない、ワンオペ育児のちょっといけていない普通の日常が描かれていた。

グニッラ・ベリストロムは2019年のインタビューの中で、アルフォンスというキャラクター自体ににそんなに思い入れはなく、各絵本の中で取り上げてきた内容を大切に思っていると話している。アルフォンスがちょっとした問題を抱えていたり、新しい状況に対処したり、そんなことを何冊もの絵本で書いてきた。

アルフォンスシリーズは商業的にも成功したが、ベリストロムが一番思い入れがあると話しているのが、軽度の脳障害と自閉症の傾向があると診断された自身の娘との経験をもとに書いた「Bill och Bolla」。娘が13歳の時に受けた重い診断を、物語にして笑いとばし、その困難な状況の中、もうひとりの子どもである息子を元気づけようとしたのがこの本なのだそうだ。

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アルフォンスの絵本は日本語でも出版されていたようだが、現在は絶版。育児をたんたんとこなすお父さんのでているこのシリーズは、今の日本ならもっと人気がでるかもしれない。

最後にグニッラ・ベリストロムの逝去を悼んでスウェーデンイラストレーター協会会長のヨセフィーン・エングストロムが寄せた言葉を紹介しよう。

(グニッラは彼女がつくった)キャラクターたちを通して、社会的リアリズムとファンタジーが同居する世界の中で、子どもたちの恐れや弱さ、乗り越えるべき課題を巧みに捉えて伝えてきました。それもいつも愛情に溢れたやり方で。大人たちの矛盾した行動にも注目してきました。グニッラ・ベリストロムの絵と物語は世代を超えて子どもたちに大きなインスピレーションを与え、支えとなってきたのです。

作家のグニッラ・ベリストロムが死去(SVT)

作家のグニッラ・ベリストロムが死去(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2021