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移民に多い容疑者になる確率、をどう考える

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Bråという略称で呼ばれるスウェーデン国家犯罪防止委員会(Brottsförebyggande rådet)が2015年から2018年の間に犯罪の容疑者となった人たちの特性を、移民かどうかという切り口でまとめた報告書のまわりで論争が起こっている。

水曜日に発表されたこのレポートは、1,スウェーデンで生まれた両親の元にスウェーデンで生まれた人、2.片方の親だけが外国生まれで、自身ははスウェーデンで生まれた人、3.スウェーデンで生まれたが両親は外国生まれ、4.両親と自身の双方とも外国生まれである人というカテゴリーにわけて分析を行っている。

例えば1のカテゴリーで犯罪の容疑者となった人の割合は3.2%だが、3のカテゴリーの人たちの間での割合は10.2%と、約3倍以上の差がある。

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図・Dagens nyheterより

報告書はこの他にも容疑者を世界地域別の出身地で分析したもの、また上の1から4のカテゴリー別に盗みや性的犯罪など、どのような犯罪の容疑者となる確率が高いかなどの分析も行っている。

この報告書に対する大きな批判は、これはこれまでにもわかっている移民と犯罪の傾向を新しくまとめただけで、偏見や差別をさらに助長するのに使われるだけで、その数字の背景にある要因の分析は行わず、またこの結果をどのように犯罪の防止に使っていくのか、という提案もないというもの。犯罪防止に関する地道な活動を行っているNGOや犯罪学の研究からも寄せられている。

同様の分析は2005年にも一度行われていたが、その後新しい傾向はないということで、これまでの司法大臣たちは、移民排斥を掲げるスウェーデン民主党から最新の調査が何度要求されていても、新しく報告書をまとめることも必要ないとして否定していた。そこに今回なぜかでてきたのがこの統計である。

今回発表された数字は、スウェーデン民主党やまたスウェーデン民主党との連携を決めて、今日までのスウェーデンの移民政策への批判色を一層強めている穏健党により、来年行われる選挙への運動で広範囲に使われていくことになるだろう。

しかし、Bråの報告書は「容疑者」についてまとめたものであり、実際に刑をうけたものでもないことにも注意が必要だ。移民であるというだけで容疑をかけられたり、警察による捜査の対象になることが多いのかもしれないが、そのあたりについて報告書は深くは触れていない。また移民という切り口でなく、経済的な状況や教育レベルや雇用状態などにもっと注力した分析のほうが、犯罪防止という目的への解決方法へと繋がるのかもしれない。

移民を犯罪の容疑者率が高いという切り口でみるだけでなく、移民政策を語るときには移民の間で医療に従事する確率が高いといった事実も考えよ、という論説も読んだ。

ともかく今の私にはっきりしていることは、上記の4のカテゴリーに属する私は、1のカテゴリーに属する私の夫と比べて、スウェーデンで犯罪の容疑者として検挙される確率が3倍近くも高いということか。困ったな。

犯罪統計で移民の占める割合が高い(ダーゲンス・ニュヘテル)

論説・よく知られた事実であるにも関わらず、これは政治的な論争の種になる(ダーゲンス・ニュヘテル)

Bråの報告書を批判することは危険な考え方である(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2021