戦争やインフレ、不景気の話がニュースにあふれ、世の中が(物理的にも)真っ暗な今のスウェーデンで幸せを感じることは難しいのだろう。幸せをどう捉えるか、という記事がメディアで目立つ。
医療心理学者のイザベル・ペトリーニ博士は、私たちは幸せでないのが正常な状態である、と説明する。人々は実際には存在しない、「いつも幸せ」という状態があると思い込んで、そうでない場合自分の人生が失敗したと考える。
彼女は16年前にオーストラリアの医師、ラス・ハリスにより書かれた『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』のATC(アクセプタンス&コミットメントセラピー)は今でも有効であることを指摘する。
この本のスウェーデン語の最新改訂版で、ラス・ハリスは幸福神話は未だに根強く、人々は苦しみがある状態が悪いものだと考えていると指摘する。
考えるべきは、幸福ではなく喜びや楽しみで、それらは辛い状況の中で共存する。例えば子どもを授かった母親は、喜びを感じると共に、大きな不安にもとらわれる。ネガティブな感情は消えないが、その中で大切なものも浮かび上がるとペトリーニ博士は解説する。否定的な感情、羞恥心や、自己否定したい感情や心配に囚われても、大丈夫、大概のことは過ぎ去ると思いそれを受け入れ、喜びを感じる場面やことにフォーカスするとよいらしい。
ペトリーニ博士は不幸だと感じる人に、人生で何を大切にしたいのかと考えることを勧めている。長期的にどのような人生を送りたいのか、そのためにはどのような行動を取るべきかを考える方法だ。人はしばしばその場での苦痛から逃れるためだけに、短期的な行動をとる。
それは例えば、孤独を感じる人がもっと辛くなると考えて社交的な場を避けたり、子どもともっと一緒に過ごしたいと考えている人が、同僚から仕事をしていないと批判されるのを恐れて、必要以上に仕事を抱え込んでしまったりするような行動だ。どちらもその場では安心感を与えてくれるかもしれないが、その小さな短期的な決断は、苦しみの根源を断ち切ることにはならず、喜びをさらに遠いものにしてしまうかもしれない。
喜びを感じる毎日を送るには、人生の方向性を定めることが大切であり、そのためには否定的な感情と同居することが必要だ。スウェーデンでの調査では60歳〜75歳の人たちが一番幸せだとなっているのも、人生の小さな出来事を感謝することを学んだからではないかと分析する実践哲学教授もいるけど、これはそのせいなのか、実際その年代の人たちが過ごしてきた世代がいまよりもいい時代だったのか、もうちょっと他の世代の時系列の比較ができないと、言い切るのは難しそうだけど。