スウェーデンの国会議員を選ぶ選挙では、政党として最低4%の支持率を得なければ議席を獲得できないという決まりある。ここしばらく、世論調査では環境党の支持率は4%を下回っており、9月の選挙以降は環境党議員が国会からいなくなってしまうことも起こりうる未来として見えてきた。
スウェーデンではどの党でも環境への取り組みはやっているので、特に環境党に投票する必要がない、というような説明をよく耳にしてきた。確かにその一面もあるのだろうが、最近、環境党に対する明らかな憎悪や嫌がらせが目立ってきたとダーゲンス・ニュヘテルの文化局長ビョーン・ヴィーマンが書いている。
昨年スウェーデン国家犯罪防止委員会(Brå)がまとめた調査によると、スウェーデンで最も脅威にさらされている政党として環境党が、極右政党のスウェーデン民主党を抜いた。
少し前まで環境党の代表を努め、環境大臣でもあったイザベラ・ロヴィーンが新しく出版した本でも、彼女は環境党への人々の嫌悪感と自身がさらされ続けてきた脅威について書いている。彼女は2021年のドイツでの選挙でもドイツ環境党が他の党と比べてフェイクニュースを流されることが2倍も多かったことにも言及している。
ドイツの環境党に関するフェイクニュースの中には、この党が二酸化炭素排出量削減のためにペットを飼うことを禁止しようとしているとか、バーベキュパーティもできなくなるといったものがあった。
スウェーデンでも今、環境党が乗馬スクールを禁止したり、薪ストーブの使用を禁止しようとしているというようなフェイクニュースが出回っている。穏健党の議員の一人にいたっては、美しい海岸からは実際には見えない風力発電の風車の写真をコラージュして貼り付け、環境党が景観を壊そうとしていると訴えるといったちょっとした事件もあった。
フェイクニュースだけではなく、先週はとある右翼サイトが気候危機活動家に対して、ナチスや人種差別主義者と同じレトリックを使って運動を妨害するよう、支持者を扇動していることも報じられた。スウェーデン民主党の議員の一人は「社会に対する危険だけではなく、環境党は文明の未来への脅威」であると表明している。
ヴィーマンは、この環境党へのヘイトの増大の背景には、気候変動と人類の持続可能性の関係が無視できなくなるにつれて、環境党の主張が文明的な生活を批判するものであり、これが挑発的だと捉えられていることにあると考えている。温室効果ガス削減の問題や生物多様性の問題は、一部の「意識高い系」の人たちだけの問題ではなく、人類全体の問題であるにも関わらずである。
ヴィーマンは、環境党の目指すものが、人々の今の生活の楽しみを奪うものでも、大切なものを台無しにするものでもないことを理解しなければいけないが、人々は目をそむけ、石を投げつける方を選んでいるという。
この夏、環境党に対する反キャンペーンは、ますます熱をもって展開されると思われ、それはイデオロギーの面からも経済開発推進の面からも、環境党が政治の表舞台から消え去ることで利を得る人は多くいるからだと彼は言う。
あとは、この状況にこれまでは環境党に投票してこなかったけど、今回は投票するべきなのではないだろうか、と考える私のような人(といっても私は国会議員の投票はできないが)がどれくらいいるかに、環境党の将来がかかっている。
ともあれ、土曜日に公開されたヴィーマンのこの論説には、現時点で616ものコメントがついていて、賛成にしても反対にしても、この論点をめぐる熱量がただものではないことだけはわかる。(注:ダーゲンス・ニュヘテルへのコメントは個人認証アプリで本人確認をしなければ、できない仕組みになっている)