今年のベストセラー本『金儲け スウェーデン(Girig-Sverig)』のアンドレアス・セルヴェンカがアフトンボラーデットに書いている経済コラムが面白い。今日紹介するのは、福祉国家として名を馳せたスウェーデンで貧困層が増えているというもの。
セルヴェンカは大金持ちのリストを発表しているが、コラムは、その金持ち一族の一員から、今の株価低迷で資産が数十億と減ったのでリストを更新するべきではないかという手紙をもらったことへの言及から始まり(セルヴェンカは、この一族にはそれでもまだ数十億残っているとコメント)、スウェーデンで貧困層が増えていることを数字を使って説いていく。
スウェーデン中央統計庁によると、前回インフレが激しかった1991年にはスウェーデンで低所得水準の暮らしとされた人は全体の7.3%だった。それが2020年には14.7%と倍増しており、またシングルマザーだけに限ると、その率は1991年の12.5%から37.5%まで増えている。
ここでの低所得水準とは所得が全体の中央値の6割に満たないことを指すが、セルヴェンカはこれが主にスウェーデンの平等社会のイメージを維持したい人たちや経済界から資金援助を受けている研究者やオピニオンリーダーたちから「あくまでも相対的な貧しさにすぎず、スウェーデンはみんながよい暮らしをしている」いう論説に利用されてきたと指摘する。
確かに、1991年から2020年の間にも最も所得の低い10%の所得も、毎年1%、合計で31%増えているが、平均では77%、所得の多い上位10%の人の間では同期間に所得は130%増えている。格差は拡大しており、下位10%の人たちの手元には、税金を払うと毎月8500クローナ(11万1000円)しか残らない(この国ではさらに消費税が25%(食品は12%)かかる)。
コラムはこの低所得層の人たちのこの冬が、今のインフレと電気代の高騰でかなり厳しいものになること、しかし、スウェーデンには低所得者層を代表してロビイング活動を行う組織はないので、この人たちの声が政治に反映されない状況がこれからも続くだろうことを訴える。
セルヴェンカは欧州中央銀行のチーフエコノミストが、低所得層救済のために富裕層への増税を提案していることに言及、しかし、このような議論は今のスウェーデンではまったく行われていないことを嘆く。
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今日はそろそろこのへんで書くのをやめないといけないが、セルヴェンカのコラムには他では読めない視点が含まれているので、これからもちょくちょく紹介していこうっと☝️