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学校給食は社会の縮図

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日本の給食への注目

少し前に、栄養士でスウェーデン全国の学校給食の課題に取り組んでいるアニカから、日本の学校給食について知りたいと連絡をもらった。

 その時は忙しかったのと自分も門外漢であるということから、お茶を濁す程度の情報を渡すだけで終わってしまったのだが、週末のスヴェンスカ・ダーグブラーデットの記事で、彼女が今学校給食で何が起こっているのかを話しているのを読んだ。

ビーガン食は誰が支える?

事の起こりは先週話題になった、ビーガンの食事の提供をコミューンから否定されたので自分で子供に作って学校まで届けることにし、働いている時間がないという母親の話。

母親は子供の最低の権利が学校で守られておらず、これは差別であると主張している。コミューン側は、既に提供しているベジタリアンの給食を食べればいいじゃないかとの立場だ。

アレルギーといった問題のほか、信条や宗教的な理由から特別食を学校給食に求める傾向は増加しており、各地のコミューンは対応に苦慮している。ストックホルムなどでは、医者の診断書がないと特別食を用意することができないという方法で現状に対応している。

食の多様性と問題の本質 

アニカは、自分の主張だけを全て押し通そうとしたり、標準で準備できる以外のものは対応できませんと突っぱねたり、両極端の意見を突き合わせるだけではこの問題はこの先も解決しないとインタビューに答えていた。

我々は間違った問題にフォーカスを当てて議論しており、子供が1日500 グラムの果物と野菜を食べるという目標が達成できていない時に、ビーガン食を学校給食で出すのは正しいのか正しくないのかという議論に明け暮れていると 。

学校給食が果たす役割

学校給食は小さな子供には栄養面からも非常に大切だが、少し大きくなってきた子供が自分たちで食べたいものを選びたくなった時には、その要求に答えることも大切だ。

 その際にフードコート方式というのは、これからの学校給食を考える上で非常に良い解決方法だそうだ。 子どもたちが選べる食事を複数用意しておくことで、逆に残飯などの問題は減るという。

階級格差を給食で解決

さらに私たちがもう一つ考えないといけない点は、食べ物の階級化である。

 何を食べるか、どういった食習慣を持っているかということと、その人たちが社会のどの階層に位置するのかという相関関係は年々強くなってきている。学校給食というのはその関係をリセットできる機会を全ての生徒に与える意味でも非常に大切である。

 給食の現場はスウェーデンでも大変

今、多くの市町村(コミューン)の政治家たちは、学校給食ではエコロジカルで近隣で栽培された食材を使い、給食センターではなくて学校併設のキッチンで作られたものを提供することを実現させようとしている。

 しかしながら学校給食に当てられる予算はそれほど増えておらず、すべての要求を限られた予算の中で提供しないといけない学校給食担当の職員に多大な負担がかかっているのが現状だ 。

 さらにはこんな難しい問題を抱えている学校給食の担当者なのに、まったく大切に扱われておらず、子供は食い散らかすばかり。我々はもっとこの人達の仕事に感謝すべきだという。せめて学年が終わる期末には給食担当の人たちに感謝を表すような儀式ができないものかとアニカは考えているそうだ。

 ものを大切にし、感謝の気持ちを表すことを教えてくれた日本の教育

ふと思いつきYouTube で探したところ、給食の調理員の方に感謝を伝えるセレモニーを開いている日本の小学校の例がすぐにいくつかみつかった。茨城の小学校で行われていた感謝式のビデオがとてもよかったので、早速これからアニカに教えてあげよう 。

 物を大切に扱うこと、自分の環境を整理し清潔にすること、そして感謝の気持ちを表すことなどの私の今の価値基盤を作ってくれた日本の小学校教育に感謝するのはこんな時。

 

食を巡る争いも第三の道で解決を (Svenska Dagbladet)

 

 

© Hiromi Blomberg 2023