swelog 今日のスウェーデンのニュース

多様化社会、環境、移民、働き方などの面での日本とは異なるアプローチがヒントになればと、 スウェーデンのテレビや新聞のニュースの中から、ささったトピックを毎日ひとつ選んで紹介しています。 週末は長めの読み物 swelog weekend スウェーデンのニュースメディアを取り巻く環境の変化にも注目しています。

スウェーデンのニュース報道とメディアについて

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Photo: Ulf Lundin/imagebank.sweden.se

世界で一番早く、報道の自由を憲法で規定したスウェーデン

透明性が高く開かれた社会を目指すスウェーデンでは、憲法を構成する法律で報道と表現の自由を規定している。スウェーデンは早くも1766年に、世界で一番最初に報道の自由を憲法に盛り込んだ国である。

ここで規定されているのは、公的機関は重要な機密事項以外のほとんどすべての文書を公開し、報道機関を含む市民が、自由にその情報にアクセスすることが可能という点だ。

報道の自由度ランキング世界2位

パリに本拠地を置く「国境なき記者団」の2018年度・報道の自由度ランキングでは、スウェーデンはノルウェーに続き世界第2位。

ジャーナリストが自由に情報を検索でき、その内容を制限なく発表できることは、権力者が暴走する危険に対抗する手段として不可欠だ。

またスウェーデンではジャーナリストはたとえ公的機関からの要請であっても、取材元の情報源を公開する必要はない。逆に公的機関は要請があれば、国家のセキュリティに関わることなど重大な機密情報を除いては、求められた情報を公開しなければならない。

ちなみに、国境なき記者団の順位では日本は67位で、これは政府の開示する情報が限定的であること、記者クラブ制度の閉鎖性などを反映したものとなっている。

 

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国境なき記者団ホームページより (https://rsf.org/en)

出版報道機関監視システム

スウェーデンの出版報道はまた、出版報道機関オンブズマン(PO)と業界の団体であるスウェーデン出版報道評議会(PON)により、報道内容が倫理的に正しいかどうか自らも監視するシステムをつくっている。

ここでは、犯罪「容疑者」の個人特定情報非公開の原則が守られているかなどが取り上げられ、個別の報道が報道業界全体で共有している倫理基盤に沿ったものかどうかが議論される。

報道により不利益を被ったと個人が思った場合は、誰でもオンブズマンに申請することが可能で、オンブズマンが内容を検討した結果、問題があると判定されたものはPONへ持ち込まれ、取扱いが適切であったかどうかが判定される。

権力を監視する報道機関が、報道機関でしか持ちえない別の権力を悪用していないか、さらに監視している構造だ。

最近のPONが扱っている訴状例 Senaste fällningar | PO

メディアのコングロマリット化

スウェーデンでは伝統的に新聞は、政党、政治的な思想を背景としていた。これは現在ではまったくその限りではなく、メディアとしての生き残りをかけて企業売買を繰り返した結果、限られた数のメディア・コングロマリットが媒体種別を問わず、各種メディアを多数所有する形になっている。

公共のテレビ、ラジオ放送を除くと、現在は以下のようなメディアグループが構成されている。

ボニエ系列 (Bonnier)

書籍・雑誌出版、映画(SF Studio)、新聞、テレビなどスウェーデンの報道やエンタメの領域で、多岐に渡り絶大な影響力をもつメディア・コングロマリット。ボニエ家による会社の歴史は1800年代初めまで遡る。

現在所有している主なメディアは以下の通り。

  • テレビ TV4グループ(C MORE, MTV)
  • 新聞  ダーゲンス・ニュヘテル、エキスプレッセン、ダーゲンス・インダストリ、スッドスヴェンスカンなど多数。傘下の新聞を合計すると日刊紙の約4分の1のシェアを占める。【追記】2019年2月8日にミットメディアの地方紙28紙を買収することを発表した。
  • 雑誌  スウェーデンの雑誌出版社として最大。発行部数が多い雑誌にÅret Runtなどがある。その他のスウェーデンにおける有力雑誌出版社は、デンマーク資本のAller社とEgmont社。
  • Eコマース Adlibris スウェーデンの書籍ネット販売大手。アマゾンを目指しているとの報道あり
シブステッド系列 (Schibsted)

ノルウェーで最大の日刊紙を持つ、同国を代表的するメディア企業。スウェーデンでも存在感を増している。

  • 新聞  スヴェンスカ・ダーグブラーデット、アフトンブラーデット
  • 人気サイト運営 Blocket (フリマ)、Prisjakt (価格比較)、TV.nu (TV番組、動画ストリーミング配信まとめサイト)。もちろんすべてスマホアプリもある。 
スタンペン系列 (Stampen)
  • 新聞  ヨーテボリを代表する新聞ヨーテボリス・ポステンや、スウェーデン西海岸や中部地方のローカル新聞を多数所有。
MTG系列 (Modern Times Group)

スウェーデンを代表する投資会社シネヴィック (Kinnevik) 系列。

  • フリーペーパー スウェーデン最大、都市部で150万部の発行部数を誇るメトロを創刊。現在メトロはCustos ABが所有している
  • テレビ  TV3、TV6、TV8、TV10、Viasat、他多数
  • ラジオ  Rix FM他多数
  • eスポーツ Dreamhack
ミットメディア系列 (Mittmedia) → 2019年2月8日 ボニエが買収を発表
  • 新聞  スウェーデン最北部ノールランド地方南部、及びダーラナ地方の数多くのローカル紙を所有する
ゴータメディア系列 (Gota Media)
  • 新聞  ブレーキンゲ、カルマー、クロノベリ地方のローカル紙を所有。2011年にボニエからクリファンスタ、イスタ、トルレボリの各ローカル紙も買収している。

出版報道補助金について

1950年代、各地方で新聞の競合が激しくなり、広告収入だけでは経営が成り立たなくなった、主に社会民主主義系列の新聞(当時)を救済するために導入された 。

その後、1990年代には新聞の経営統合の嵐が吹き荒れ、保守、自由党系の新聞が社民党系の新聞を買収するケースが相次ぎ、現在の出版報道補助金の役割はあいまいなものになっている。

毎年傘下の新聞合計で5000万クローナ(約6億3千万円)の補助金を獲得しているミットメディアグループは、多数の競合関係にある新聞を所有しており、その両方が国の補助金で互いの競争力を争うという混乱した状況にある。

国全体では、2017年も年間5億クローナ(約63億円)が出版報道補助金として各新聞メディアに分配された。

出版報道補助金は、これまでもスヴェンスカ・ダーグブラーデットのような大新聞が補助金の多くを受け取っていること、今日の多様化社会では、新聞の社説の持つ政治的意味が弱くなっていることなどから、度々その存在意義が大きな議論の対象となってきた。

またEUも、現在では様々なメディアと世論形成の環境が、補助金設立当時から激しく変化していることから新聞を対象としたスウェーデンの出版報道補助金の正当性に疑問を投げかけている。

Presstöd- Myndigheten för press, radio och tv

スウェーデン人とニュースメディア

以下のグラフはオックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所 デジタルニュース・レポート2018 スウェーデン より引用した。

メディアに関する情報源

管轄官庁・統計

Myndigheten för press, radio och tv

Faktasamlingen Svenska mediehus | TU

Dagspress | Fakta om dagspress - en tjänst från TU

Mediebarometern | Nordicom

MedieSverige | Nordicom 

KIA-index - den officiella mätvalutan för svenska webbplatser

メディア業界ニュース

2018年7月から下記の3つの媒体のすべてがボニエ傘下となった。

Resumé

マーケティング、コミュニケーション、デザイン、広告クリエイティブ業界の専門誌。創刊は1950年。1989年にボニエが買収。現在、雑誌としては月1回発行。

Dagens Media - Om och för mediebranschen

1998年設立の広告主のマーケティング担当者向けのメディア業界情報誌。2018年7月にボニエが買収。現在はウェブ版とメルマガを中心に運営中。

Medievärlden

報道・出版業界向け専門誌。メディアに関する政治、立法、倫理に関わる問題を扱う。2017年からDagens Mediaの傘下に。

メディア・報道内容の検証

スウェーデン国営ラジオ放送P1の番組。ポッドキャストでも提供。メディア、報道姿勢などに関するニュース、スキャンダルを取り上げる。P1が様々なメディアの担当者にインタビューを挑む番組。報道とは?メディアの役割とは?に興味にある人におすすめ。

sverigesradio.se

参考文献