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AIボイス詐欺が蔓延し、私たちは合言葉の世界に戻る

1年近く前「声が盗まれる」という話題をニュースレターで取り上げた時には、この犯罪はまだアメリカでしか確認されていなかったが、声をAIで複製し行う詐欺行為は、スウェーデンでも耳にするようになってきた。

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詐欺師のためのAIボイス複製技術の進化は目覚ましく、今では誰かが話している1分程度の音声ファイルがあれば、その声を複製する簡単に使えて安価なAIソフトがある。私たちは自分の声はユニークだと思っているが、今私たちが使っている携帯電話にはアナログ信号をデジタル信号に変換するプロセッサーが搭載されており、そのデジタル信号を分析することで声を構成するハーモニーがわかる。

AIボイスを作るためのソフトは今ダークネットで5000ユーロから1万ユーロ(約82万〜164万円)くらい出せば購入できるレベルのものになったのだそう。

少し前にシッドスヴェンスカンは、娘の声のトーンと話し方がそっくりな人物から新しいパソコンを買うためのお金を振り込んでほしいと頼まれた人の話を取り上げていた。この人は娘であることを疑わなかったが、振込がうまくいかなかったため、娘に自分から電話したことで詐欺が発覚した。

警察の国家詐欺対策センターの責任者は、対応策としては、いまからSNS上の投稿などを削除しても意味がなく(これらは既に合法的に(ということは私たちが許可して)何度もコピーされてシェアされている)、それよりは電話の向こう側の人物がなにをさせようとしているかに注意を払い、一度電話を切って自分からかけなおしたり、普段から当人たちの間でしかわからない質問と答えを準備し、それを定期的に更新することなどを勧めている。

声のクローンを作成するために詐欺師がアンケートなどを装った電話をかけてくることもあるので、そのような電話は話さないですぐに切ることも必要だ。問題は、このような対処を比較的取りやすい若い人たちは既に電話を使うことはほとんどないが、高齢者は電話でのコミュニケーションを好むことが多く、高齢者向けにAIボイスに関する知識と対策を普及する必要がある。

しかし、AIという高度な技術が進んで、私たちが子どもの時にふざけて使っていた「山!」「川!」の合言葉の世界に戻っていくとは思わなかったな。

専門家・AIを使ってSNSから人格をハイジャックするのはどれほど簡単か(アフトンボラーデット)

© Hiromi Blomberg 2023