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安全性より強欲さが勝つ・Open AI騒動の影で解任された二人の女性取締役

Open AI CEOのサム・アルトマンが解雇されたり復職したり。

この一連の騒動の中で、スウェーデンのメディアはAI研究者のマックス・テグマークに取材しないのかなと思っていたが、昨夜やっとインタビューがでていた。マックス・テグマークはマサチューセッツ工科大学(MIT)教授で、理論物理学者。AIの脅威について警告し続けている人である。

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Open AIが進める新しいプロジェクトのひとつが人類への脅威をもたらす可能性があると同社の科学者たちが取締役会に警告したことを真剣に受け止めなかったためアルトマンが解雇されたことは、すでにロイター通信が伝えている。

デグマークによれば、アルトマンは復職したが、その影で、AIをまったく新しいレベルに引き上げるQ*プロジェクトを阻止しようとした二人の女性取締役が解任された。

驚異的な進化を続けるAIは、これまでの”普通”のAIから、コントロールの仕方がよくわからないものへと移行しつつあり、安全性と人間の強欲さが衝突した場合、法律や規制なければ、必ず強欲さが勝つ。それが証明されたのが今回の一連の動きだとテグマークは話す。

テグマークはEUで進められているAI Act(AI規制法)も、フランスやドイツからのロビーイングにより、大企業は影響を受けず、中小プレイヤーにのみ効力を持つような骨抜きされたものに変わりつつあることも伝えていて、規制がない限り、強欲さが安全性の問題など吹き飛ばしてしまうのだと説明する。彼が求めているのは、医薬品などで運用されている国などの法的機関による安全性基準をAIの世界にも確立することである。

この記事では「強欲さ」と訳したスウェーデン語の「girig、girighet」という言葉は、この単語をタイトルに使った『強欲スウェーデン(Girig-Sverige)』という本が去年出版されるまで知らなかったのだけど、テグマークも今回のインタビューの中で繰り返して使っていて、これからますますよく耳にすることになるのだろうな.....

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AI研究者「安全性よりも欲が勝つ」(SVT)

情報筋・「人間への脅威」がAIトップの解雇理由(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023