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暗黒の9月と軍隊

ギャング団の抗争で吹き荒れる暴力の嵐で、この9月だけで命を落とした人は12人。11人が射殺で、つい先日ウプサラ郊外の住宅地で起こった爆破事件でなくなったのは、ギャング団とは関係のない、標的の隣に住んでいた若い女性だった。ギャンク団の抗争で1ヶ月の間にこれほど多くの人が死亡したのは2019年の12月以来だそうで、メディアは「暗黒の9月(Svart September)」という言葉を使い始めた。

今、起こっているのはFoxと呼ばれるネットワークのリーダー、Rawa Majidが仕掛けた3方面で起こっている抗争で、銃器、爆発物、そして命を顧みない若者たちが次から次へと投入されているのが特徴だ。

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ストックホルム警察の犯罪学の専門家スヴェン・グラナースは、Foxが「成功」しているのは、ソーシャルメディアやチャットアプリを有効に使い、武器の調達と社会の中で行き所のない若者を巧みに勧誘している点にあると説明する。また犯罪者たちの間では、若年者から撃たれるということは屈辱的なことだと考えられており、これが反撃の激しさの連鎖になっているとも。

一方、ストックホルム大学の犯罪学の教授フィリペ・エストラーダは、初期のある程度計画的で組織的だった銃撃や爆発事件とは異なり(夜間に部外者のいないところで行われていた)、今起きていることは(公共の場で日中に親族などが殺される)というまったく毛色の違ったもので、そのダイナミクスをコントロールするのは難しくなっていると言う。

この状況を受けて政府は軍隊の協力を求めた。28日にダーゲンス・ニュヘテルのインタビューに応じたミカエル・ビデーン国防軍最高司令官は「軍が警察に協力できることがあれば、国内の治安維持のためにできる限りのことをする準備がある」と話した。

昨夜のSVTのニュースではマッツ・クヌットソン解説員が、これまでははっきりと区別されていた警察と軍隊が、一緒に行動するという提案がごく短期間の間に広範囲に渡る政治的な支持を受けるようになった点を指摘する。

警察と軍隊は別の組織で、対応する問題も別物であるという考え方が根強かったが、それがあっという間に書き換えられようとしている。クヌットソン解説員は、軍隊は警官の代わりに現場で働くのではなく、裏方として、軍隊が持っている知識や能力、分析力などを提供する形で協力するようだと話していたが、一言、1931年に起こった「オーダーレン銃撃事件」についても触れることを忘れなかった。

「オーダーレン銃撃事件」とは、スウェーデン国内で起こった事件に協力を求められた陸軍部隊が善良な市民5名を銃で殺したという、スウェーデンを変えた重大事件なのだが、このことについては長くなりそうなので、明日のレターで書いてみることにする。

暗黒の9月、1ヶ月で12人が殺される(ダーゲンス・ニュヘテル)

ギャング団の暴力について国防軍最高司令官「警察に協力できることがあればする」(ダーゲンス・ニュヘテル)

クヌットソン解説「以前はありえないと考えられていた提案が当たり前になっている」(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023