ここのところニュースでよく見かけるが、どう決着するか先の見えなかった問題があって、このブログで取り上げてこなかったのが「セメント危機」問題だ。
スウェーデンでセメント材料の石灰の採掘を事実上独占してしまっているCementa社のゴットランドにある採石現場が、環境や飲料水に与えるリスクがあると判断され、土地環境問題の裁判所でも操業をすぐにやめるよう判断がでた。しかし、操業が停止されればスウェーデン中の建設現場でたちまちセメント不足がおこり、建設産業などが大混乱におちいるという、深刻だがちょっと間抜けな(?失礼!)問題だ。
先週始まった今期のスウェーデン国会でも、まず最初に政府が解決しなければならない大きな問題だ。
昨日までの展開では、環境リスクは一旦おいておいて、政府はCementaへの砕石許可を延長してこの危機を乗り越えようとしている。最大野党の穏健党は産業界の意向を背負っているので、もちろんこの方針には賛成。これで一旦は落ち着きそうだが、左党は難色を示しており、夏休み前の賃貸住宅の家賃問題のようにもっとこんがらがった問題に発展する可能性もゼロではなかったが、なんとかGOサインをだしそうだ。
見てて辛そうなのは連立政権の環境党のペール・ボールンド環境大臣で、環境リスクがあるものに許可を出さなれば立ち行かなくなっており、見る度に疲労の色が濃くなっているし、信頼も落としつつある。
国内で石灰が砕石できなければ、輸入すればいいという単純なものでもないようで、ヨーロッパ内で今セメントの需要と供給はちょうどバランスが取れており、すぐにどこから買ってこれるような余剰分はない。
またスウェーデンでは、大型架橋や高速道、高速鉄道の建設が予定されており、そのような高い安全基準もクリアできるゴットランドの質の良い石灰は、そこらじゅうで簡単にとれるようなものでもないらしい。
ヨーロッパから輸入できないとなると、中国という流れだが、その品質などはまだ道なことが多すぎる。
今回のセメント危機によい側面があるとするば、スウェーデンではこれを契機にセメントに依存しない、木材や新素材を使用した新しい建設技術の開発に拍車がかかるだろう、というだろう。ただ、これには時間もかかり、目の前のセメント危機は今は異なる方法で乗り切らなくてはならない。
今スウェーデン全体の需要の65%はCementa社のゴットランドの大型採石場から、20%はショブデから、そして残りの15%は輸入という状態だが、ゴットランドにここまで集約されてしまうまでは、スウェーデン各地に小さな石灰採石場がたくさんあったそう。でもこれを再開するにも、それなりの時間が必要となる。
こんなことを聞くと、砂糖の原料になるテンサイ(ビート)がよく採れる私の住むスウェーデン南部にも昔は小さな製糖工場がたくさんあったのに、今はデンマークの砂糖コングロマリットの大きな製糖工場ひとつにほぼ集約されている。この向上になにかあれば、スウェーデン中がたちまち砂糖不足に陥ったり、はしないのかな?