スウェーデンでは知られているだけでも30ほどの場所にウランがある。そのうちのいくつかの場所は、ウランの濃度は低いが世界最大級であると考えられているが、2018年にスウェーデンでのウランの採掘は禁止された。めでたしめでたし。
なのに、今、政府与党とスウェーデン民主党は、この禁止措置の撤廃を検討していて、複数の外国企業がイェムトランド地方のオーヴィケン(Oviken)と呼ばれる村での採掘に関心を示している。スウェーデン政府が原子力発電所をもっともっとつくりたいと考えているからだ。
スウェーデンの放射線安全庁によると、現在スウェーデンの電力生産の約3分の1を占める、3つの原子力発電所にあるウランを合計すると1050トンになる。ここで使われているウランはオーストラリア、カナダ、そして近年はカザフスタンやウズベキスタンといった国で調達されたものだ。
スウェーデンの地質学者たちは、理論的にはスウェーデンにはこれから必要となるであろうウランを自国で賄えるだけの埋蔵量があり、外国に環境問題を輸出しないためにも自国での採掘には利点があるという。
放射性物質であるウランは、採掘時に隣接する水路や近隣環境に拡散しないように適切な処理が行われなくてはいけない。また採掘現場で働く人たちのリスクも考慮されなければならないが、2012年にはフィンランドのタルヴィヴァーラのウラン鉱山で近隣の湖と森林が汚染され、ヨーロッパ最悪の環境スキャンダルの一つといわれた被害が起こっている。オーヴィケンの近くには、イェムトランドの住民5万5000人の水源となっているStorsjörnという湖があり、近隣住民の中には採掘が認可されてしまうと水源汚染の可能性があることを心配する人も多い。
このウラン埋蔵地には、これからの太陽光発電や風力発電事業でも重要なバッテリー製造に必要なバナジウムもあって、カナダのDistrict Metals社がここでバナジウム採掘のための調査を行うことはすでに決定している。
この記事を読んで日本のウランについて気になったかたは、こちらのページにいろいろまとまっていたので、どうぞ。