英国の外務省が、スウェーデンではテロが起こる可能性が非常に高いとして、スウェーデンへの渡航に際して注意するように自国民に呼びかけても、基準が異なるのでスウェーデン政府からの警戒レベル指標は変わりませんと、クリステルソン首相が話しているを聞いたのはほんの数日前だったが、昨日は、そのスウェーデン政府が判断するテロ警戒レベルが「増大した脅威」から「高い脅威」に引き上げられ、私のところにも、ストックホルムの日本大使館から注意喚起のメールが送られてきた。このメール曰く、
- 8月17日、スウェーデン政府はスウェーデンにおけるテロ脅威レベルを5段階中の3段階目(増大した脅威)からから4段階目(高い脅威)に引き上げました。これは、テロ攻撃の意図と能力を有した活動家が攻撃を実行に移すことについて「高い脅威」があることを意味します。
- テロ事件や不測の事態に巻き込まれないよう、当面の間、治安や安全対策に関する情報収集に努めつつ、身の回りの安全に一層の注意を払ってください
一連のスウェーデンでのコーラン焼却で、バクダッドのスウェーデン大使館が襲撃されているし、テロリスト集団の代表がスウェーデンへの攻撃を呼びかけたり、海外にあるスウェーデン関連施設への攻撃を計画している兆候もあるとの報道もある。8月上旬にはイズミルのスウェーデン名誉領事館も襲撃された。
具体的にスウェーデンへの報復を促しているのは、レバノンのヒズボラやソマリアのアル・シャバブなどだが、それをロシアの支援を受けた活動家がメッセージを増大させる形で大きく広がっていっている、とスウェーデンの安全保障関連省庁の関係者がインタビューで話している。
スウェーデン公共放送は、今回テロ警戒レベルが引き上げられた件に関して特別ページをつくっての報道を始めた。但し警戒レベルが挙げられたと言っても、昨日の午後の記者会見での首相のメッセージでは私たち一般市民は「十分に注意しながら普段通りの生活を送ってほしい」というもので、この一見矛盾した声明を批判するテロ研究者もいる。
スウェーデンでは目下、ストックホルムでもマルメでも野外で多くの人を集めて行われる各種フェスティバルが開催されているが、そちらでも特に行動制限などはない。英国とは異なり、フィンランドはスウェーデンは依然として安全な旅行先である判断しているとの声明が昨日改めて出されたりもしていた。
スウェーデン防衛大学で情報分析を教えるヨルゲン・ホルムルンドさんによると、テロ警戒レベル4についての具体的なガイドラインはなく、これは各当局や自治体に対して、もう一段界高いレベルでのセキュリティの見直しを要求するものなのだそう。
さて、注意を払いながら普段通りの生活をしろ、と言われても何をすればいいのか?
スウェーデン危機管理庁(MSB)の責任者は「恐れる必要はないが、周囲の状況に注意し、異常があれば警察に連絡するように」とアドバイスする。新しい情報を積極的に集めるようにして、何かあったらすぐに行動できるように整えながら周囲に気を配り、心配ごとは他の人と話すようにするとよいという。ノイズキャンリング機能のついたヘッドホンはやめて、靴はスニーカーにしておくとよいのかもしれない。
私は2015年に起こった同時多発テロ事件のずっと前、1995年に地下鉄で爆発事件があった時にパリに住んでいて、その時は地下鉄に乗ると持ち主のわからない荷物がないかなど常に神経を尖らせていて、ちょっと変だなと思うとすぐに車両を変えたり、その電車から降りるようにしていたことを覚えている。
今、スウェーデンはヨーロッパからの観光客で溢れていて、ルンドの街中でもスペイン語やイタリア語が頻繁に聴こえてくるけど、今回のテロ警戒レベルの変更でコロナからせっかく立ち上がってきた観光業界が、また冷え込んでいったりするのかもしれない。しかし、それよりもなによりも、ストックホルムの文化フェスティバルも、マルメの音楽フェスティバルもどうか無事に日程を終え、その後もテロ事件など起こらないことを心から祈る。
英国がスウェーデンでのテロ攻撃について警告(ダーゲンス・ニュヘテル)