幸せとは環境的条件のみで決まるものではなく、個々人の捉え方である。同じような環境に身をおいていても幸せな人もいれば、不幸せな人もいる。
オスロ大学の心理学研究者エスペン・ロイサム教授は、私たちの主観的幸福感は、遺伝や様々な要因に基づくことを、この度、世界レベルでまとめて発表した。遺伝による影響については、双子などを研究対象とし、世界幸福度ランキングの報告書と比較した。このランキングでは、直近の6年はフィンランドがトップの位置にあり、デンマーク、アイスランド、スウェーデン、ノルウェーの北欧各国も、毎年上位にランキングされている。
心理学の専門誌に最近掲載された彼らの研究は、遺伝が主観的幸福感の約3分の1を支配しているとまとめた。環境的要因については、2つのカテゴリーに分けられ、一つは特定の個人のみが経験したもので、ここには、幼いころに受けたトラウマ、友人や学校での経験、出会ったパートナーなどが含まれる。もう一方は共通の環境要因で、一つの国や広範囲に渡る社会の構成員のすべてが共有するもの、例えば福祉サービスへのアクセスの容易さ、汚職のあるなし、犯罪率の高さや、表現の自由があるかないかのような要因だ。北欧各国はこのあたりの社会共通の環境要因が整っているとされるが、ロイサム教授によるとこの環境要因は人々の主体的幸福感の20%を占める。
遺伝的要因が33%で、共通的環境要因が20%なら、より幸せと感じるかどうかは、生まれた時に既に決まってしまっているのではと考えてしまうかもしれないが、教授は、そうではなく、政治や社会は私たちの遺伝的可能性を開花させるための土台となっており、社会環境要因が整っていると、創造的な人はより創造性を発揮できるなどなど、底を持ち上げる効果があるのだという。スウェーデンで長年首相を務めたターゲ・エランダーは、いつも、政治家の仕事は人々がその上で活き活きと踊れるダンスフロアを作ることだと言っていたが、まさにこの考え方がピタリと当てはまる。
主観的幸福感は、トレーニングすることができる。例えばオリンピックのメダリストでは、金メダリストが一番幸せであることを理解するのは難しくないが、次に幸せなのは銀メダリストではなく、銅メダリストである。銀メダリストは落胆しているが、銅メダリストは感謝している。自分が既に手にしているものに感謝するという能力は人の幸福感を大きく左右するし、訓練して改善していくことができると教授は解説する。
幸福感はお金ではそれほど高まらないが、友人や家族といった社会的関係には大きな影響を受ける。他にも目標を持つこと、体を動かすこともよい効果がある。また幸せとはよい選択をすることでもあり、教育、職業、友人、パートナーなどの選択が大きく関わる。ということは選択の自由のないところに幸せはない。
これまで幸福度ランキングのニュースでは北欧が上位なのねということぐらいしか理解してなかったけど、この記事で、最新の調査ではイスラエルがフィンランド、デンマーク、アイスランドに続き4位であること、また最下位にはレバノン、アフガニスタンが並んでいることを知り、ハッとさせられた。