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移民の文化と言葉とコロナ

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自分の親族、知人たちの間から33人を新型コロナ肺炎で亡くしたというヌリ・キノさんの話が、今朝のニュースで取り上げられていた。

キノさんは今回感染が多く広がったストックホルム郊外のソーデルテリエに暮らす。新型コロナがスウェーデンを襲った当初、政府から移民グループへの情報の伝達方法は、言葉の面からも移民たちの暮らし、文化に適合させて伝えるという面からも、決して十分なものではなかったと批判の声をあげる。

多くの移民グループがまとまって暮らす地域は、今回のパンデミックで多くの犠牲者を出した。ここで暮らす人たちにはサービス産業や医療や交通機関などで働くエッセンシャルワーカーも多く、リモートワークもできない。

さらには一つのアパートに三世代が一緒に暮らすこともよくあり、高齢者を隔離することも難しい。また親族、知人との交流もさかんで、休日などにはお茶や食事で30人を超える人がアパートの一室に集まることもよくある、とキノさんは説明する。

一方、ソーデルテリエと同様、移民が多く暮らすスコーネ地方のマルメでは感染の広がりはストックホルム郊外とは異なる低いレベルであったから、普段どういう暮らし方をしていようが、公衆衛生庁の指示を受けとって行動できていたら、感染の拡大はもっと抑えることができていたと考えていいと思う。

スウェーデンでCovide-19による死者が多かった背景には、高齢者施設と移民が多い地区の感染拡大があることは、かなり早い時期から指摘されてきた。

今、感染の状況が落ち着いてきて(例えば集中治療室で手当をうけている人の数は驚くほど減ってきている)、このキノさんのような人の声もニュースに取り上げられるようになってくるとその改善策ももっと具体的に検討されるようになるだろうが、一方でコロナの影でしばらく存在感のなかったスウェーデン民主党など、移民排斥を求める声も再び高くなってきそうな予感がする。

コロナも嫌だが極右政党も嫌だ。

一難去って(まだ去ってないけど)また一難、って誰が考えた言葉か知らないけど、ズシンとくるなぁ。

ソーデルテリエのヌリさんはコロナで33人を亡くした

© Hiromi Blomberg 2023