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54歳からの警察への再就職

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日曜日にデンマークでは5万人の観客をいれたアレーナでのコンサートが行われ、昨日のノルウェーの国政選挙では、政権交代が起こり労働党が26%の議席を獲得。8年ぶりに左派連合政権が誕生する見込みとなった。投票結果に大きな影響を与えたのが気候、石油採掘と分析されている

(ノルウェーの石油については以前この記事でも取り上げたグリーンランドの採掘しない石油、グレタとVOGUE - swelog ここだけのスウェーデンのニュース

というのが今週の週初めのこのあたりの空気だが、スウェーデンからはまったく違う話題で、54才で警察で働き始めることになったヘレーネさんのことを書こうと思う。

長く営業職として働いていた54歳のヘレーネ・リレヘルさんは、コロナ禍の業績の落ち込みから職を失った。当初はこの歳で失業だなんてとパニック気味で、午前中はトレーニング、日中はコーチングを受け、目につく求人は片っ端から応募するという忙しい日々を送ったが、新しい仕事はまったく見つからなかった。

当時彼女の再就職活動を支えてくれていたTRR(Trygghetsrådet)の担当者から受けたアドバイスは「もっとゆっくりして、本当にやりたいこと考えてみて」というもの。

TRR (Trygghetsrådet ”安心のための助言機関”)はスウェーデンの民間企業がリストラを行う際に、ホワイトカラーの従業員が早く次の仕事をみつけられるように支援する非営利の団体で40年ほどの歴史を持つ。

活動費は、加入している3万5000社の雇用主が支払う給与の0.3%を支払うことで支えられている。

社会の動きと連動して、存続する意義のなくなった仕事をしている人には早く次の時代で必要とされる分野で活躍してもらおう、という考え方がTRRの活動の根幹にあり、このあたりの切替の速さは時に潔すぎるようにも思うが、これがスウェーデンを前進させる原動力の一部であるのは間違いない。

未来のホワイトカラーの仕事 - swelog ここだけのスウェーデンのニュースより

そこで、彼女が思い出したのは警察官になる夢。父親が警官であった彼女は若い頃一度この職業に挑戦したことがあったが試験に不合格となり、その後この夢のことは忘れてしまっていた。

警察庁の一般職に応募するには学歴がたりないようであったが、それでもLinkedinで警察をフォローし始め、また面識はなかったがLinkedinで知り合いの知り合いである直接面識はないが警察で働いている人に、警察で働きたいと勇気をだして連絡をとってみた。

彼女の場合、幸運にも、その人から緊急電話のオペレーターのトレーニングのコースに2名キャンセルが出たことを教えてもらい、面接を受けてコースに合格。その後もテスト参加者の最高年齢を更新しながら、他のテストにも合格し18週間のトレーニングを経て、晴れて緊急電話対応オペレーターとしての職につくことができた。

コロナ禍では多くの客室乗務員の人たちが、航空産業の現場を離れ、医療の現場や、販売の現場に新しい職を見つけたことも記憶に新しい。

ヘレーネさんは、失業したという状態を問題ではなくチャンスだと考えて、行動することの大切さを強調する。何ができるのかではなく、ゆっくり何がしたいのを考えることのできるチャンスで、それがわかったら、彼女がしたように知らない人にも話を聞いてもらうなどちょっと勇気のいる行動もとってみようと。

それは年齢がいくつであっても同じことだと、今、警察での仕事をとても楽しんでこなしているヘレーネさんは言っているようである。

失業が新しいキャリアの始まり・ヘレーナの場合(ダーゲンス・ニュヘテル)

 

© Hiromi Blomberg 2023