ロシアのウクライナ侵攻により、今スウェーデンの世論や政府がどの様に動いたり発言したりしているかについては、明日のニュースレターでまとめて書こうと思うので、今日はこの戦争がなかったら、スウェーデンで一番大きく報道されていたであろう、昨日発表された「コロナ監査の最終報告書」について書いておこう。
(第一回と第二回の監査報告書の中身についてはこちらをどうぞ)
これまでの報告書の中でも、「スウェーデンは高齢者をコロナから守ることに失敗した(第一次報告書)」「スウェーデンのパンデミックへの対応は何もかもが遅すぎて、当然満たしているべき標準に達していない(第二次報告者)」と厳しい批判が続いていたが、今回の最終報告書では論調はさらに厳しくなった。
一方で、2020年の春に、ロックダウンなどの厳しい行動規制をとった他の国々とは異なり、スウェーデンが自発的な行動規範を重視した独自の道を選んだことについては、大筋では正しい方向だったが、その対策は微力で、またタイミングも遅すぎたとした。
パンデミックはまだ終わっていないが、このタイミングで最終報告書が提出されることは以前から決まっていた。監査委員会は、パンデミックの発生時にスウェーデンではより強力な感染対策を導入し、政府があらゆる場面で主導権を握るべきだったとまとめている。マスクに関しては入手できるようになった時点で、着用指示を出すべきであったとも。
また社会全体での感染の広がりをもっと抑えようと努力していれば、高齢者や高リスクの人たちをもっと守ることができたのではないかと指摘しているが、同時に当初ヨーロッパで最も死亡率が高かったスウェーデンは、これまでの全経緯でみれば、超過死亡率の低い国の1つであることも述べている。
名指しで厳しい批判を受けたのは、公衆衛生庁の指示をほぼすべて無批判に受け入れたステファン・ロベーン前首相。前首相は、公衆衛生庁以外の専門家の声にもっと耳を傾けるべきだったし、またカール・ヨハンソン前公衆衛生庁長官が一人で庁の最終決定を行う形は、深刻な社会的危機に際して十分な形ではないとも指摘した。
一方で、経済危機管理における迅速かつ大規模な金融財政戦略をとったことは高評価しており、混乱の中、正確さよりも速さを優先させたことは正しい戦略だったとした。
公衆衛生庁に関しては市民の行動に関する勧告をもっと明確な行動規制として出すべきだった、感染拡大が始まった時にイタリアのスキー旅行から戻ってきた人たちをもっときちんと隔離や検査するべきだった、などなど個々の対策についても指摘を行った。
報告書の中身は厳しく、野党はこれで政府を批判しようとしているが、SVTのニュース解説員はパンデミックの渦中では野党も政府のやり方を支持していたことを指摘し、これから9月の統一選挙にかけて、この点で政府批判を行ってもパンチにかけるだろうといい、また多くの人にとってパンデミックは徐々に過去のものになりつつあり、スウェーデンは危機をうまく切り抜けることができたと考えているだろうと話す。
そうよ、コロナがやっと収束し、以前のような感じに戻れるのかと思い始めたところで、今度は戦争ですか! 本当にやめてほしい。