NHKの朝のニュース番組に、朝日新聞と読売新聞の政治部局長を呼んで、日本の自衛隊のあり方について10分程度の激論を戦わせる、そういった感じのディベートを、スウェーデン公共放送SVTは、頻繁にアレンジして視聴者に提示している。
昨日の朝のSVTの番組でも、社会民主主義系と右派系の論客を呼んで、イースターの週末にスウェーデン各地で起こった暴動に関して、表現の自由と警察権力による武力行使をどう考えるかを、討論という形でみせていた。
ニュース番組の役割は、事実を伝えると同時にどんな考え方が世の中にあるかを知ることだろうから、天気予報やサッカーの試合結果やこの週のおすすめドラマといった軽めの話題と一緒に、こういった政治的核心に触れる問題をその分野で一目置かれる意見の異なる専門家やジャーナリストの口から、迅速に聞くことができるのはとてもよいといつも思う。
昨日はディベートではないが、社会民主主義系のダブロイド紙アフトンブラーデットの政治局長がスウェーデンのNATO加盟に関して意見を覆したことを、SVTが伝えていた。アフトンブラーデット紙はこれまでの社説では、一貫してスウェーデンのNATO加盟に反対してきたが、最新の社説で「スウェーデンは安全保障のためにNATOに参加するべきだ」と意見を変えた。
NATO加盟賛成の声が高まる中で、アフトンブラーデット紙は反対の立場を表明してきたいまや少数派(?)だったので、この動きは他にも影響を与えそうだ。
政治局長のアンデシュ・リンドベリは「少し躊躇するところはあるが、先週発表されたフィンランドの安全保障に関する見解をきっかけに意見を変え、スウェーデンもNATO加盟申請を行うべきだと考えるようになった」とSVTのインタビューに答えている。
現在のスウェーデンの安全保障はフィンランドと最も緊密な関係であり、もしもフィンランドだけがNATOに参加するとスウェーデンの安全保障は弱体化するから、と説明するリンドベリは、もしもNATOに加盟するとしてもスウェーデンではスウェーデン領土内に決して核兵器を受け入れてはいけない、と付け加える。核についての問題は別途議論が必要で、ゆっくり時間をかけて考えるべきだと彼は考える。
しかし、核兵器についてスウェーデンで議論されるようになるとは、ほんの数ヶ月前にはきっと誰も考えていなかったと思うのですが。