swelog ニュースで語るスウェーデン

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ヘディ・フリード

先週、作家で心理学者のヘディ・フリードさんが98歳で亡くなったというニュースがあった。1924年にルーマニアで生まれたヘディさんは、20歳の時に送られたアウシュビッツの強制収容所からの生き残りで、1945年にスウェーデンにやってきた。ダーゲンス・ニュヘテルの文化局長のビヨン・ヴィーマンが、彼女のことを20世紀から21世紀にかけてのスウェーデンで最も重要かつ意味のあるオピニオン・リーダーの一人であったと書いている。

ヘディさんにとってはマルメに到着した時に差し出された暖かいチョコレートドリンクがスウェーデンそのものを意味するものだった。そのヘディさんが、切迫した状況下では人間は他者に対してどのような残虐行為も行いうることを訴え、ホロコーストはまた起こる可能性があると声を上げるようになったのは、1990年代初頭にネオナチが台頭してきた時で、彼女は本を執筆し、スウェーデンの学校を回って何万人という子どもたちに自身の体験を証言するようになった。ナチズムや人種差別、暴力や偏見に対抗する教育活動を讃えられ、2017年にはパルメ賞を受賞している。

ヘディさんはかなりの高齢になっても、活動し声を上げることをやめず、必要がある限り努力することを公言していた。2017年に出版した「ホロコーストについて聞かれたこと」という著作はスウェーデンを代表する文学賞にノミネートされ、また2019年に95歳で初めての児童文学作品も発表している。

ヘディさんは2015年のアウシュビッツ解放70周年の記念の年に、戦後初めて反ユダヤ主義の高まりを恐れていると書き、また2020年には、今起こっていることと1930年代に起こったことを比較して、目の前で社会規範が置き換えられようとしており、私たちは暗黒の道を進んでいると書いた。この9月に極右政党のスウェーデン民主党がスウェーデン第2の政党となったニュースは、ヘディさんが最も耳にしたくはなかったニュースであっただろう。

ヴィーマンは、ヘディさんがスウェーデンにいるというだけで、公の場で言っていいことと悪いこととの間に暗黙の了解があったように感じていたが、その彼女がもうこの世にいない、チョコレートドリンクも冷え切ってしまった、と彼女の後に残された空虚を見つめている。

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2017年のヘディさんのドキュメンタリーが、今SVTで再び観ることができるようになっているので、リンクを張っておきます

www.svtplay.se

ビヨン・ヴィーマン「ヘディ・フリードは現代のスウェーデンで最も重要なオピニオンリーダーだった」(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2022