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気候と地球の「正義限界点」はとうに超えている

水曜日にNatureに掲載された、この新しい研究結果に世界でどれだけの注目が集まるだろうか? ヨハン・ロックストロームを始めとする世界から50人の科学者が3年掛けてまとめたこのレポートは、今のところは豊かな北半球に住む多くの人にはあまり影響はないが、地球全体をみると、現在の状況はすでに多くの人にとって危険なものとなっていることを指摘している。

www.nature.com

気候危機に関して少しは興味のある人はパリ協定、そして大気気温の上昇を1.5度以内に抑えるという目標については知っているだろう。そして現時点で1.2度上昇しており、まだ1.5度には達していないとはいうものの、この目標では世界各地で起きている広範な被害を防ぐにはまったく十分ではなく、弱い立場の人へも損害を与えないための公平・正義な限界値は、既に超えてしまっている1.0度であったということをレポートはまとめている。

今回提唱されているのは、安全でかつ公正・正義(Safe and Just)な地球全体の目標で、レポートは温暖化だけでなく、生物圏、水、リンや窒素などの栄養素循環、大気汚染などという分野についても、安全で公正な限界点を示したが、大気汚染を除くすべての分野で我々はすでにこの限界値を超えてしまっているのだという。

今の地球の状況について、ロックストロームは「体が慢性疾患で侵されていて病院にいったのに、風邪だと診断されて鎮痛剤をもらっただけのような状態だ」と説明し、本当はどれだけ悪い状態なのか、つまり地球が深刻な病に侵されていることを科学的に診断する必要があったという。ロックストロームは「安全で公正な」地球を取り戻すための拡張性のあるソリューションは多く存在するというが、、私たちが急速にこれらの着手しない限り、残された時間はどんどん短くなっているとも話す。

この新しいレポートについて、そのうちに日本語でも、そのうちにちゃんとしたメディアがきちんと書いてくれますように。今年の台風の発生具合とか明らかにこれまでとは違うようだし。限界点を超えているということを、日本の人は、例えば北欧の人たちよりも、もっと実感をもって理解できそうな気がするんだけど。

新研究・地球の気候限界点はすでに過ぎてしまっている(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2023