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「スウェーデンの環境政策は間違っている」

との発言の主は、気候変動問題に関して私たちが大きな信頼をよせる、ポツダム気候研究所所長でストックホルム大学教授のヨハン・ロックストローム。ロックストロームは、今のスウェーデン政府は気候政策をすべてエネルギー政策で解決しようとしており、世界に向けて間違ったシグナルを送っていると厳しく批判する。

スウェーデンはヨーロッパの片隅の小さな国だが、これまでの気候変動問題への取り組みにおいて、どのような決定がなされ何を達成してきたかという点では、世界に影響を与えてきた環境大国だといってよいと彼は言う。

スウェーデンのやってきたことを、これまでインドのモディが、中国の習近平が、そしてブラジルでは今、ルーラが注視しているのに、今のスウェーデンからの発表は、新しい原子力発電所と充電ステーションの増築などが主で、温室効果ガス排出量削減の問題をすてべ電化で解決するという方策に限定されてしまっていると嘆く。このことにより、世界をリードしてきたスウェーデンでもできないのなら、うちも無理という、他国にむけてネガティブなシグナルを送ってしまうことを彼は危惧する。

ロックストロームは電化は必要だが、気候問題をエネルギー問題に限定するのは科学的な見地に反すると言う。昨年秋に新政権が発足してから、政府は環境庁を閉鎖し、環境と気候問題をビジネスやエネルギー政策と統合する新しい省庁を作ったことでも、彼を含めて多方面から批判を受けていた。問題をエネルギー転換に注力し、石炭、石油、ガスから再生可能エネルギーへ移行するだけでは、パリ協定の目標を達成できず、温暖化を2度以内に抑えることはできないことはIPCCや自身の研究所の研究などからも明らかだ、と彼は強調する。

スウェーデンは持続可能性の問題をもっと網羅的に取り組む必要があり、幅広い環境課題に取り組み、例えば、排出量削減のために農業を変革し、また森林や土壌に存在する自然の炭素吸収源を保護、回復させることなどにも注力してければいけないと言う。これまでも人間の行為によって排出された温室効果ガスの約半分を海と大地が吸収してきてきたが、この吸収剤となってきた自然も、多様性が失われるにつれてその力を失っている。多様性が保たれた自然の生態系は、二酸化炭素を固定させるのに一番適しているとロックストロームは説明する。

ということで、しばらくはスウェーデン政府の口から発表される気候温暖化対策(=エネルギー政策)は眉唾態度で聞いていただき、私たちは、自然の二酸化炭素吸収力を高める取り組みに注目していくことにしようではありませんか!

もうすぐ公開される来月のElle Activeの連載記事でも、今回はこのあたりのことを取り上げていて、それは(久しぶりに)希望のもてる方向性だったので、この記事の公開を楽しみに待っていただければ幸いです!

スウェーデン政府のエネルギー重視の政策に厳しい環境批判(ダーゲンス・インダストリ)

© Hiromi Blomberg 2023