ストックホルム大学でアルコールと薬物について研究しているユッカ・トーレネン教授の話が興味深い。彼はフィンランド人は酒ばかり飲んでいるというステレオタイプがどのように作られたかを知っているし、スウェーデンに住むようになったフィンランド人がどのようにスウェーデン人の飲酒習慣を取り入れてきたかを説明してくれる。
フィンランドから多くの人がスウェーデンにやってきた1970年代の頭、スウェーデンでは都市化が進んでいたがフィンランドはまだ農村社会だった。農村社会ではアルコールは男性だけが他の男性と一緒に飲むのもで、大量を男同士だけで飲酒する習慣は、男女とも少量を高頻度で飲む、都市化が進んだスウェーデンで目立った。
その後フィンランドでも都市化が進み、女性もアルコールを飲むようになり、1990年代にはフェンランドのアルコール消費量は急激に増加した。
トーレネン教授は、近年のITの世界などでのフィンランドの発展は、酒を飲んでいる時間もないような世代によるものだといい、またフィンランドではビールがハードリカーにとって替わり、スウェーデンはワインを飲む国になった。過去10年間、フィンランドのアルコール消費量は大きく減少しており、今ではスウェーデンとの差は殆どない。
にも関わらず、フィンランド人は大酒を飲むというステレオタイプはなくなることはない。
民俗学者のステラン・ベックマンさんは、この責任はすべての人にあるという。STVの番組内で流されたジョークであれ、職場でふと誰かが言ったことであれ、ステレオタイプが様々な形で常に繰り返されると、これが固定化する。ステレオタイプを壊すには、より多くの人がメディアで流されること、日常生活で言われること、そのすべてを疑い始めることが必要だ。
ストックホルムに住むフェンランド系のヴェラさんは、フィンランド人と飲酒にまつわるスウェーデン人からのあらゆるコメントにうんざりしているが、その実、その人たちは実生活でフィンランド人と関わりがなく、フェンランド人がどのような人たちかを知らないのだと思うと話す。
日本でも、韓国人がキムチばっかり食べてるとかステレオタイプを声高に言う人はたくさんいそうだけど、その人たちも実は実際の韓国人、韓国系人の暮らしは知らないのでは?