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学校、株式と利益、そして格差

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週末はずっとスウェーデンの基礎学校(日本の小学校と中学校相当)と、また進学と職業コースの高校でそれぞれ使用される社会科の教科書を読んでいて、本当に勉強になることばかりだったのだが、やはり一番関心したのは小学校向けの教科書である。「社会人」として必要なことはすべてここに書かれている。

昭和な時代の田舎で無邪気に近くの市立小学校に通っていた私は、それぞれの親の経済状況のことなどあまり考えもしなかったが、このスウェーデンの教科書では各家庭の経済状況は異なり、生活レベルの差となってあわられるとはっきり書かれている。

そんなことが頭の中をぐるぐるしていた中、昨日の夜にみたニュースにはおそらく「違和感」というやつを感じたのだが、その自分の違和感の正体をまだちゃんと掴めていない。ニュースで伝えられていた内容を以下で列挙するので、よければ一緒に考えてみていただければ嬉しいです。

  • 今スウェーデンで成功しているフリースクール「エンゲルスカ・スコーラン」は全国で39校を運営し、28000人の生徒が学ぶ。さらに22万人の子どもが転校、入学を待っている。
  • 学校は株式資本で運営されており、生徒一人一年あたり1万クローナ(約12万円)の利益を出している。クラスは30人構成で、1クラスあたり年に30万クローナ(約380万円)の利益がでる仕組みだ。
  • 学校の株式の75%は、2012年に創業者のバルバラ・ベリストロームからアメリカの投資運用会社のTA Associatesに売却された。
  • またこの度、ルクセンブルグのParadigm Capitalはエンゲルスカ・スコーランの株式を30億クローナ超(約380億円)で買収した。これによりTA Associatesは10億クローナ(約126億円)以上の売却益を得たものとみられている。
  • TA Associatesが大株主だった時には、学校運営からの利益は株主に分配もされていたが、多くは事業の拡大のためにも使われており、そこにはスウェーデン国内だけでなく、海外の学校の買収も含まれている。
  • 新しい株主は2020年から2023年にかけてさらに12校を開校する予定で、スウェーデンではあと39校ほど運営したい意向だ。
  • 創業者のベリストロームは2012年の株式売却で約5億クローナ(約63億円)を手したが、現在もアメリカの財団を介して13.9%の株式を所有する。彼女はよい学校運営には利益は必要だとの考え方だ。
  • エンゲルスカ・スコーランは学歴の高い両親の元で生まれた子どもばかりが集まり、分断された社会を助長するとの批判の声も高い。格差の増長、教育を投資対象にすることの是非を問うフリースクール論争を象徴する学校になっている。

さて、ここまで読まれた方はどう思われましたか? この学校に通っている子どもも親もとても満足している、という点も考慮するべきだし……

私はまず、なぜ利益がでているのか? を理解するところからだな、きっと。

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© Hiromi Blomberg 2023