さて、もうひとりの論者はダーゲンス・ニュヘテルの文化局長のビョーン・ヴィーマンで、彼はマンハッタン計画、トリニティ実験が「世界を破滅へと追い込むかもしれない」可能性がありながら進められた当時と、気候変動問題が危険な領域に入っているのに、その流れを止める大きな阻止力が働いていない現代を並べて論じている。
映画では1945年7月16日に世界で最初の原子爆弾がニューメキシコのロスアラモスで爆発する際に、その発射で地球の大気に火がつきその影響が世界中に及ぶかもしれない可能性がゼロではなかったのに、実験は行われたことが伝えられる。実際にはそのような事態は起こらなかったが、オッペンハイマーの原爆は人類に「自滅する」という恐怖をもたらしただけでなく、「人新世」と呼ばれる新しい地質学の時代の幕開けとなったと考えられているとヴィーマンは言う。
二酸化炭素を排出することで永久的な成長を実現するという現代の実験は、トリニティ計画と同様、致死する可能性を含んでおり、人類と地球、そして宇宙との関係が永遠に変化した新しい時代に私たちはいる。この夏の南ヨーロッパと北米での猛暑、そして先週スウェーデンを襲った暴風雨の背後には、人間の活動があるのに世界は未だ化石燃料の燃焼をやめない。地球がこれまでの暑さの記録を更新したこの7月には、石油大手のシェルのCEOはこれまでの排出量削減の約束を反故にすると発表し、英国のスナック首相は北海での石油・ガス掘削許可を新たに100件認可するとヴィーマンはまとめている。
ヴィーマンは、オッペンハイマーと敵対する関係になった水爆の開発者エドワード・テラーが、実は地球温暖化の影響に警鐘を鳴らした最初の科学者の一人であったことも伝えている。
テラーは人類が炭素系燃料を集中的に使用することによって、大気中の二酸化炭素濃度が上昇し、地球の平均気温を上昇させ、極地の氷河が融解させる可能性について警告していた。テラーは1959年、アメリカの石油産業が100周年を祝うシンポジウムで、この「温室効果」により溶けた氷河でニューヨークが浸水するリスクがあること、世界中の沿岸部はすべて水没する可能性があり、事態はほとんどの人が考えているよりも深刻であることを指摘した」と、ヴィーマンは書いている。
だれも耳を傾けなかったのだけれど。